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引き抜き成形に注力した事業を展開するフィンランドの企業 Excel Composites

2018-07-03

FRPをはじめとした複合材料業界において、
欧州といえばやはりドイツがメッカ。

その後にフランスやイギリスなどが追従するという構図です。

欧州の強みといえば多くの国が陸でつながり、
ユーロという経済通貨同盟を構築するなど、
新しい国々の協業について取り組んでいることです。

もちろん近年はイギリスのEU離脱、
ラテン系の国でくすぶる経済危機など、
課題が多いのは事実ですが取り組みそのものは非常に前衛的です。

そしてこの欧州においてFRP業界的に盲点となっている国の一つがフィンランドです。

今日はこのフィンランドにおいてFRP業界でも知名度高い Excel Composite についてご紹介したいと思います。

 

Excel Composite とは

電子雷管の技術者だった3名で1960年に設立された、
比較的歴史の長い企業です。

http://www.exelcomposites.com/en-us/english/investor/en/exelasaninvestment/history.aspx#1960

スポーツ製品から参入をし、
その後様々な企業から引き抜き成形事業を買収しながら今の形になったとのこと。

従業員は400名を超えているようですのでそれなりの規模といえます。

Excel Composites 50年の歴史という以下の動画を見ると少しイメージがわくかもしれません。

以下の英語のHPを見ると、主力事業としては輸送産業、建築、風力発電、通信の4つであることがわかります。

http://www.exelcomposites.com/en-us/english/home.aspx

取り扱う製品としても引き抜きを主軸にしながらも、
柔軟性ある様々な形状物の成形、
そして積層板や必要に応じたアッセンブリー製品も販売しているとのこと。

やはりかなり広い範囲の製品に対して柔軟に対応している様子がわかります。

製品概要一覧については以下のHPからも見ることができます。

http://www.exelcomposites.com/en-us/english/products.aspx

 

この企業の特徴は取り扱う材料の基本が、

GF/Polyester

であること。

材料を実績があって取り扱いやすく、価格も抑えられるGFに注力している、
ということが事業性の観点から好印象です。

そこに様々な成形技術、設計技術を組み合わせることで、
付加価値をつけるというFRP業界では基本といえるビジネス戦略を徹底しています。

 

Excel Composite の展開するアプリケーション

どのようなアプリケーションがあるのか、
については以下のような動画を見ると適用先の一面は理解できそうです。
(以下の動画は輸送機器関係のものに特化したものとなっています)

 

引き抜き成形というと量産性に目が行きがちですが、
金型に対する高いノウハウが必要である、
ということはあまり知られていません。

むしろ引き抜き成形技術は金型設計技術であるといっても過言ではありません。

それに加え糸のほつれや含浸安定性等、
材料選定や材料そのものの化学的性質に関する理解が重要といえます。

Excel Composites はM&Aによりこれらの技術を吸収していったと想像します。

 

ここで一度主力事業に話を戻します。

輸送産業、建築、風力発電、通信という4つの事業のうち、
最初の3つの事業については比較的イメージしやすいと思います。

 

その一方で通信の領域でもFRPは強みを発現できるとのことです。

Excel Composites のHPでは以下のようにかかれています。

In telecommunication applications composites provide perfect solution
through features like weather resistance (low CME and CTE),
stiffness, weight savings (30-80% lighter than AL)
and good di-electric properties (low loss tangent).

参照URL:http://www.exelcomposites.com/en-us/english/markets/telecommunication.aspx

上記英文の最後に述べられている誘電特性というのが、
FRPの新たな展開を考えるにあたってのポイントになりそうです。

結論から先に言うと通信事業でのアンテナ材料として、
誘電正接が小さいものが求められているとのことです。

誘電正接というのは抵抗がゼロのコンデンサに流れる電流を分母に、
寄生抵抗存在条件下で流れる電流を分子にした時の分数をtanで表したときの角度のことをいいます。

つまり、電荷のやり取りの際に発生する損失の少ない材料が好ましいということです。

GFRPはこの誘電特性に優れているため、
高剛性、軽量、耐候性という特性をさらに際立たせているものと考えます。

 

 

いかがでしたでしょうか。

今週のメールマガジンではフィンランドの引き抜き成形企業 Excel Composites の紹介と引き抜き成形技術、
アプリケーションに付随したFRPの誘電特性について概要を述べてみました。

今回の例もそうですがFRPを少し異なる観点から見ることで新たな特性を見出すことができます。

軽量、高強度という呪縛にとらわれ過ぎずに、
他に適用できる用途は無いのか。

このような俯瞰的視点でアプリケーションを見直すことが、
新たな展開を見出すブレークスルーになるかもしれません。

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