SPE / Automotive Composites Conference & Exhibition から見る北米自動車動向 Vol.102
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FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.102 2018/8/27
(隔週月曜日発行)
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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・「FRP業界最新ニュース」
・お知らせ
・編集後記
<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━
今日の「FRP業界最新ニュース」では、
「 SPE / Automotive Composites Conference & Exhibition から見る北米自動車動向 」
ということについて述べてみたいと思います。
来月9月5日から7日にかけ、北米ミシガン州のデトロイト近郊のNoviという町で、
SPE / Automotive Composites Conference & Exhibition
というSPEとACCEが共同での講演と出展会を開催するようです。
以下から情報を見ることができます。
この講演会の題目を見ることで近年の北米の自動車業界におけるFRPを含む複合材料の動向を見てみよう、
というのが今週のメルマガの主題となります。
主な講演に関する情報は以下の通りです。
*で一つのテーマとなっています。
2つの講演と3つのディベートのようです。
以下に抜粋します。
* JOHN VIERA
GLOBAL DIRECTOR at Ford Motor Co.
“Sustainable Manufacturing at Ford and How Composites
Can Help to Address Industry Challenges”
* MARK VOSS
ENGINEERING GROUP MANAGER at General Motors Co.
“The World’s First Carbon Fiber Pickup Box”
* HOW CAN THE PLASTICS INDUSTRY PROFIT FROM THE
NEXT GENERATION OF VEHICLES?
– JUD GIBSON, Vice President, Commercial Americas, DSM
– PAUL PLATTE, Manager, Automotive & Transportation, Covestro
* HOW 3D PRINTING IS CHANGING
AUTOMOTIVE COMPOSITES BUSINESS
– ELLEN LEE. Additive Manufacturing/3D Printing Technical Leader, Ford Motor Co.
– JEFF DEGRANGE, Chief Commercial Officer, Impossible Objects Incorporated
– KARA NOACK, Regional Business Director, BASF 3D Printing Solutions NA
* SUSTAINABLE MATERIALS MANAGEMENT AND THE
CIRCULAR ECONOMY IN AUTOMOTIVE APPLICATIONS
– DEBBIE MIELEWSKI, Senior Technical Leader,
Sustainable Materials and Advanced Materials, Ford Motor Co.
– LAUREN SMITH, Project Manager,
Renewable Energy & Sustainability Metrics, General Motors Company
– JAY OLSON, Global Manager, Materials Engineering & Technology,
John Deere Technology Innovation Center
– CHARLENE WALL, Director of Sustainability, BASF Corporation
– DON WINGARD, Senior Research Scientist, Wellman Advanced Materials
– MIKE SALTZBERG, Global Business Director, Biomaterials, DuPont
全体として興味深いのが、
「SUSTAINABLE」
という単語の多さです。
維持可能なという意味ですが、
日本語で意訳すると環境にやさしい、といったイメージになります。
上記でいうとFordの方がこのテーマについて登壇して話をするようです。
Fordはどうやらセルロースを用いたFRPに興味があるようで、
Celaneseとも共同開発をしていると述べています。
加えてリサイクルにも取り組むことで、
自動車メーカーとしては不可避ともいえる、
ライフサイクルアセスメントを重要視するとの話です。
Fordと対極にいるGMは「Pickup Boxes」の話ですね。
ピックアップトラックの荷台に、
帝人製のSereebo(R)のIシリーズを使った例です。
繊維長20mmの炭素繊維とPA6を組み合わせた熱可塑性のSMCを適用しています。
若干古新聞ですが、過去の私のメルマガで詳細を述べていますので、
興味ある方は以下のURLをご覧ください。
https://archives.mag2.com/0001643058/20180423093000000.html
もう一つはやはり北米といえば3Dプリンティングですね。
一時期ほどではありませんが、まだまだ何とかやっていこう、
という意気込みを感じます。
もちろん3Dプリンティングも使いようによっては非常に有効なツールですので、
今後も注目されていくと感じています。
(ただ、FRPに対してはどうかは若干疑問の部分もあります)
上記で得られた情報をもとにした私の考えを書いてみたいと思います。
まず、リサイクルに対して目が向き始めたのは非常に重要だと思います。
自動車業界、またはそれに興味ある方のほとんどはコストとタクトタイムのことをおっしゃります。
しかし、それ以前に重要なのが
「使用した材料はリサイクルできるのか」
ということ。
この観点を視野に入れているケースはOEMに勤めている方でも少数派です。
OEMの上層(役員クラス)になると概ねまずリサイクルのことを指摘します。
そういう意味では北米自動車業界も本格的にFRPを使っていこうというフェーズに来たとも言えます。
もともと航空機業界でFRPを取り扱える技術者も比較的多い国ですので、
一度やるとなればそれなりに形にしてくると思います。
FRPの異方性を理解している技術者が国の中にある程度の数いるのは北米最大の強みとも言えます。
その一方で懸念もあります。
上記の講演ではFRP(広域では複合材料)を適用する動機として、
いまだに軽量化による燃費改善というところがメインで述べられています。
一部、構造設計の観点で薄肉化による空間確保について言及がなされていますが、
言ってしまえばその程度です。
FRPを機能性として設計していこうという議論があまりないような印象なのです。
これは若干時代遅れといっても過言ではありません。
もしかするとこの状況を踏まえ、
* HOW CAN THE PLASTICS INDUSTRY PROFIT FROM THE
NEXT GENERATION OF VEHICLES?
というディスカッションテーマを設定したのかもしれません。
議論に参加しているのもOEM、成形メーカー、材料メーカーとなっています。
このディスカッションでどのような議論になるのかという中身によって、
北米の自動車業界がどのような方向性を見ようとしているのか、
ということがさらに見えてくるのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
今日は北米自動車業界でのFRPに対する取り組みを理解するアプローチとして、
SPE / Automotive Composites Conference & Exhibition のテーマをご紹介しました。
上述の通り少なくともリサイクルに目が向き始めたということは、
北米自動車業界が本格的に検討を進めているということの裏返しでもあります。
そして上記のような講演会で議論されるのはあくまで表面的な部分であるのが一般的。
本当のコアの話は水面下で進んでいるはずです。
GMもHondaについでSMCをピックアップトラックに適用するなど着実に適用例が広がってきていると感じています。
産業の規模から常に注目される自動車業界。
上記のような話も今後の戦略検討の一助としていただければ幸いです。
<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━
今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。
– 2018年 9月 13日(木)
10:30?16:30(昼食付)
会場:PAT-T606会議室6階606(東京都・千代田区秋葉原)
CFRP/GFRP関連事業の事業戦略と推進方法
<経営者および決裁権を持つマネージャー・事業設計担当者向け>
http://www.johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC180903.php
– 2018年 10月 4日(木)
10:30?16:30
会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)
FRP製品開発フローと技術的なポイント
https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/1927
– 2018年 11月 27日(木)
10:30-16:30(昼食付)
会場:ウインクあいち12階1208(愛知県名古屋市中村区名駅)
<FRP関連技術で海外進出を目指す企業向け>
海外サプライヤとの折衝・交渉のための技術的ポイントとノウハウ
http://www.johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC181117.php
<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━
先日、私の両親も一緒に家族で軽井沢へ旅行に行きました。
私は全く記憶が無いのですが、小学生くらいの時にいったはずという、
鬼押し出し園に行こうという両親の提案で現地訪問。
そこでの感想はひたすら「恐ろしい」でした。
浅間山の噴火の威力を目の当たりにしたようで、
畏敬の念を抱いていました。
1783年の大噴火の時に噴出した溶岩でできたのが鬼押し出し園ですが、
冷静に考えるとこのサイズの岩が飛んでくる(溶岩が冷え固まる結果ですが)というのは、
恐ろしい力です。
火山噴火は噴煙で多地域を寒冷化させる、火山灰による停電など、
場合によっては地震以上に甚大な被害を与えることが知られています。
鬼押し出し園のふもとに石碑(浅間山噴火記念碑)がありました。
江戸の大噴火の教訓として書かれていたその内容は、一言でいうと、
「異常を感じたら山から遠いところにすぐ逃げること」
でした。
先人の教えは肝に銘じておきたいですね。
・ 著書情報━━━━━━━━━━━━━━━━
『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php
『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php
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