東京工科大学における CMC(セラミックス複合材料)センター が本格稼働開始 Vol.111
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FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.111 2018/12/31
(隔週月曜日発行)
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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・「FRP業界最新ニュース」
・お知らせ
・編集後記
<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━
今日の「FRP業界最新ニュース」では、
「 東京工科大学における CMC(セラミックス複合材料)センター が本格稼働開始 」
ということについて述べてみたいと思います。
FRPも属する「複合材料」という材料カテゴリー。
その中で抜群の耐熱性を誇るのがセラミックをマトリックスとする、
「CMC (Ceramic Matrix Composites)」
です。
強化繊維であるSiC繊維の耐熱性は1300℃を超えており、
FRPの使用限界の一つといわれる300℃(有機物が間違いなく酸化分解を始める温度)と比較し、
異次元のところにあります。
そのようなCMCについて、実用化研究をする研究機関として、
東京工科大学内にCMC(セラミックス複合材料)センターが設立されました。
https://www.teu.ac.jp/karl/cmc/index.html
部門は以下の5つで構成されているようです。
1. 先端素材・プロセス部門
2. 性能評価・解析部門
3. 計算機利用・信頼解析部門
4. 技術支援部門
5. 研究事務支援室
技術的な点については今後、弊社HPのコラムで述べてみたいと思います。
今日のメールマガジンでは先月の国際航空宇宙展における、
「CMC(セラミックス複合材料)センター 設立記念シンポジウム」
でのやり取りを中心に述べてみます。
シンポジウムの情報は以下のURLで見ることができます。
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1155921.html
要点をいくつか述べてみると以下のようになります。
– 出席者は東京工科大のCMCセンター長、IHI、三菱重工(航空エンジン)、川崎重工の部長クラス以上
– シンポジウムでの話は基本的に航空機エンジン関連の話で、発電機の話は無し
– 低コストタイプの酸化物CMCで低圧タービンのシュラウドを作りたい(三菱)
– 上記CMCの作製方法として「高速MI製造」の確立を目指している(三菱)
– 三次元形状でクーポン同等の性能がでるかの検証が急務(三菱)
– 耐熱温度1200℃クラスのCMCは概ね開発終了し、部品開発中(IHI)
– 上記材料のアプリケーションは高圧、低圧のタービンで、冷熱サイクル、無冷却運転テスト実施済み(IHI)
– 耐熱性1400℃クラスのCMCは研究開発の段階だが、高熱側1350℃の冷熱サイクル試験実施済み(IHI)
– CMCを燃焼器のライナーに使い、希薄燃焼を実現することでNOx排出減少と燃費向上実現を狙う(川崎)
– 上記ライナーは複数部品を組み合わせるセグメント形式を検討中(川崎)
– 上記セグメント生産スピードにおいて、GEの1セグメントあたり10分で自社よりも進んでいる印象を持っている(川崎)
– 2030年頃から運用されるエンジンに採用したい(川崎)
– CMCに関連し、必要とされる技術やものは「評価設備、設計解析、検査技術」(3社共通)
– CMCに関する課題の一つに、加工に対応できる企業が少ないと感じる(川崎)
上記、各社の色が出ていて非常に興味深いですね。
アプリケーションはタービン(シュラウド、または静翼)が本命とみている企業が多く、
GEと類似の考え方ですね。
GEはCMCをシュラウド(メインはタービン)、高圧タービン翼、ディスク材などへは既に適用済みです。
今後(2025年ターゲット)は第二世代のCMC製、高圧タービンを搭載するとGEは明言しており、
日本企業のアプローチは若干遅れ気味というのが正直な印象です。
さらに言うと、GEはより一体化した軽量化コンポーネントの実現も目指しており、
時代はセグメントからコンポーネントへと移りつつあります。
それ以外で興味があったのは、
形状物での性能が平板ベースと同じかどうかを確認するという観点です。
本来、製造業の基本的なロジックですが、
近年は航空機業界くらいでしか聞けなくなってきている印象です。
形を作ることを急ぐことは開発スピードを速めることにつなげられる可能性がある一方、
FRPや今回ご紹介しているCMCのように「異方性」が存在する材料の場合、
形状ありきの設計では行き詰まる可能性も出てきます。
上記の発言をしている三菱の方は、
設計ロジックの基本を実感する経験があるのだと推測します。
その一方で、評価するハードとソフトが不足しているとのこと。
これはFRP業界にも共通する話題ですね。
特にソフト(CAEのソフトだけというイメージではなく、人、仕組み等含め)の不足は深刻です。
基本に忠実に、幅広く全体を見ながら理解していく、
という技術の基本ができる技術者が減っているのではないでしょうか。
今はやりの生産性、回答を算出するまでのアルゴリズムが不明なAIの台頭もあり、
物事をシンプルに、かつ本質を見ようとする企業も人も減る一方です。
海外の後追いではなく、
まずは既存のものを「組み合せる」という考え方で、
新しいテーマをを提案できないと、
いつまでたっても二番煎じの状態が続くでしょう。
日本も欧米の後追いという考え方を捨て、
自らが主導するという能動的な考え方に変換し、
リスクを取れるような思考の転換が必要に違いありません。
いかがでしたでしょうか。
CMCはFRP以上に用途が制限されるため前途は多難だと思います。
しかし、今回のように学術業界と産業界がある程度連携しながら話を進めよう、
という文化ができたこと自体は大きな一歩だと思っています。
2019年以降も世の中は不安定な要素を抱えながらになりますが、
こういう時代だからこそ適切なリスクヘッジをしながら、
挑戦すべき時ではないでしょうか。
※CMCに関しては過去に以下のコラムで述べたことがあります。
合わせてご覧ください。
・GE aviation が CMC 向け SiC 製造工場設立
http://ur0.work/OXix
・高耐熱複合材料の CMC ( Ceramics Matrix Composites )
http://ur0.work/OXiA
<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━
今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。
– 2019年 2月21日(木)
10:30-16:30
会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)
CFRP/GFRP材料規格(Material Spec)の中身とその作成に必要な材料試験実施法
https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/2320
– 2019年3月18日(月)
時間:終日の予定
会場:都内(詳細未定)
FRPの材料に注力したテーマでの登壇依頼がきております。
企画は概ね出来上がっておりますので、
年明けに企画会社からリリースされると思います。
詳細決まり次第、本メールマガジン、HPにて告知いたします。
<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━
いよいよ今年も今日を残すだけとなりました。
色々な方が今年は早かったと言っている場面に遭遇しますが、
私は今の仕事になってから若干時間の流れがゆっくりになった気がします。
とはいえ、年の瀬になると時間の流れが速くなるのは確か、
ということで、今年は例年と異なるイベントを企画してみました。
それは、
「港で釣り」
です。
私は幼少期、あまり海に行った記憶が無いのですが、
妻はどちらかというと海が好きな家庭で育ったことから、
結婚以来、夏になると毎年海に行くようになりました。
今年は折角なら、海に泳ぎに行くのではなく、釣りに行ってみよう、
ということになり、勢いで企画しました。
家族全員初の海での釣りです。
今回は真鶴に行ったのですが、そこの「真鶴産業活性化センター」で竿をレンタル。
(ご参考)真鶴産業活性化センター:http://www.town.manazuru.kanagawa.jp/shisetsu/440.html
目の前の港で釣りを始めました。
当日はひどい雨。
今年は本当に雨男でした。
後厄だったから、仕方ないのではないか、というのがよりどころです。
しばらくすると小学2年の長女がイワシを釣りあげました。
喜んでいるとその後、さらに赤黒い魚を釣り上げ。
よくわからず楽しんでいたのですが、
その後、魚はアイゴであることが判明。
刺されなくてよかったです….。
その後は隣で釣りをしていた地元の方に仕掛けをいただくなど、温かい交流もありつつ、
結果的には20匹くらい釣りました。
子供たちにとってクリスマス時期のいい思い出となればと思います。
本年も本メールマガジンをご購読いただきありがとうございました。
良い年をお迎えください。
・ 著書/連載情報━━━━━━━━━━━━━━━━
月刊「機械設計」(日刊工業新聞社)「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」連載中
http://pub.nikkan.co.jp/magazine_series/detail/0001
『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php
『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php
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