バイオ系材料である PFA をマトリックスとした内装構造部材 Vol.116
( Chemical structure of? polyfurfuryl alcohol (PFA)? was referred from https://www.wikiwand.com/en/Thermoset_polymer_matrix)
「 バイオ系材料である PFA をマトリックスとした内装構造部材 」
ということについて述べてみたいと思います。
いよいよ今週からJECです。
今年のJECの出展社をざっと見ていますが、
昨年度と少し様変わりしている部分もありそうですね。
FRPに求められるバイオ系材料の展開
さて、そんな中、バイオ系材料であるPFAをマトリックスとした材料について、
JEC Innovation awardにノミネートされている、
というリリースが出ていました。
出している企業は Composites Evolution という企業です。
製品概要等は以下のURLから見ることができます。
https://compositesevolution.com/products/fire-resistant-pfa-prepregs/
技術的な詳細については別途コラムで書こうと思っていますが、
このテーマは今後のFRP業界の一つの方向性を示していると考えています。
それは、
– フェノール以外の難燃性熱硬化性樹脂がマトリックスであること
– バイオ系材料であるPFAを用いていること
– 内装材の構造部材に用いていること
という3点です。
ここ最近、内装材に対するFRPの適用要望は高まっています。
昨年までは航空機の内装構造部材向けに、
ガラス繊維と熱可塑性樹脂を組み合わせた、
というものが多かったのですが、
アプリケーションも航空機に限定せず、
公共交通機関の乗り物全体に広げ、
またそこにあえて熱硬化の樹脂を適用しようというのが非常に興味深いです。
polyfurfuryl alcohol (PFA)とは
今回用いている樹脂はPFAというもので、
「ポリフルフリルアルコール」
という樹脂です。
それほど特殊なものではなく、
我々も度々口にしているコーヒーの苦み成分でもあります。
これを酸触媒で重合させることで三次元架橋させ、
樹脂にするのです。
そのため、イメージ的に
「環境にも人にもやさしい」
という訴求ポイントがでてきます。
この環境的なイメージを前面に押し出した「構造部材」が出てきたというのが変曲点と感じます。
どのような素材も、マテリアルライフアセスメントについて何らかの見通しを出さない限り、
なかなか幅広い業種に受け止められるのは難しいからです。
そういう意味ではFRPもついに幅広い産業界に受け入れてほしいという取り組みが本格化し、
その取り組みの大きな一歩が環境性能と実際のアプリケーションに用いる機能性を両立させた、
と考えることができるのです。
上記で発表された内装構造部材は、
片持ちで人の座るシートを支える部品のようです。
片持ちにすることで、部材の軽量化(メーター長さで5kg以下と述べられています)と、
それによる車軸への荷重低減、単位走行距離あたりのエネルギー削減になる上、
片持ちのため掃除も楽になるとのこと。
ただ、片持ちにするためこの部材は剛性が必要となる故、
高弾性率の炭素繊維を使うようです。
それでも上記のバイオ系材料を用いる、
というイメージが受け入れられれば、
十分にこれから市場浸透していく可能性はあるでしょう。
新環境性というイメージと難燃性。
いよいよFRPの新たな展開が見えてきたと思います。
非常に楽しみなカテゴリーですね。