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CFRPを用いた電子ピアノ EXXEO

2019-07-24

今日はFRPを興味深い形で適用した EXXEO という電子ピアノをご紹介したいと思います。

この企業のHPは以下の所から見ることができます。

https://www.exxeo.co/

 

様々な試みを集約した前衛的な電子ピアノ

私も趣味で音楽をやっていることから、
その斬新さを感じました。

 

以下の動画がイメージをつかむのには良いと思います。

まず、使用している材料が面白いです。

CFRPに加え、皮革、航空機グレードのアルミニウムといった、
ピアノではあまり使わないような材料も積極的に取り入れています。

またグランドピアノの音を再現するため、
200W程度のスピーカーを9つ配置。

さらには安定した音を出しながらも長寿命を実現したバッテリーも搭載。
一回の充電で20時間は演奏できるそうです。

 

 

楽器としての特性

楽器である以上、その性能が最重要です。

まず一つ目のポイントが鍵盤のタッチ。

これはピアノをやる方が最重要視するところであり、
電子ピアノ最大の課題ともいわれています。

弦を叩くことでアナログ的に音を出すピアノでは、
楽譜に書かれていること、場合によってはそれ以上の繊細さで、
音の強弱を表現します。

これを電子的に表現するのは至難の業であり、
どれだけ技術が進化してもプロが納得する強弱を実現する電子ピアノは存在しないといわれています。

細かくは書かれていませんが、
冒頭紹介したHPに書かれているのは、

「顧客の要望に応じたタッチを実現するため、詳細は手作業で修正する」

といことです。

実際のピアノも調律をするときには鍵盤を一つ一つ取り外し、
タッチの感触を専用のペンチなどで形状を整えながら調整します。

それと同じようなことを電子でもやるということですね。

おそらく、センサーのセッティングに調整幅があるものと推測します。

言ってしまえばオーダーメイドですね。

 

 

CFRP適用の背景

意外かもしれませんが、

「温湿度等の環境変動への耐久性向上」

が前面にでています。

一般的なピアノは、その構造部材の大部分が木材です。

木材は有機物なので、吸湿します。

この吸湿による影響はかなり大きく、
その調整をするために年に一度は調律を行い、
湿度による変形を調整することが知られています。

ここに、線膨張係数が小さく、
また吸湿性も木材に比べて小さいCFRPを用いることで、
安定した音響を実現するというのがコンセプトのようです。

スピーカーを使う電子ピアノであっても、
そのスピーカーから出る音に加え、
設置されている構造部材への反響も使いながら深みのある音を出すのが、
この電子ピアノのコンセプトです。

またCFRPは木材と比較し高剛性であることから、
サステインによる残響音も長くすることができるとのこと。

ここもCFRPを使うことによって実現できた大きなポイントであると述べられています。

形状を一般的なグランドピアノから変更することにより、
構造部材としての剛性向上を実現。

ペダルの設置された土台から少し浮いた形でねじりを加えながら後部へ流れる流線形状としています。

この形状によりさらなる剛性向上に加え、
バッテリーを収納するスペースを確保。

さらには重心を下げることに成功し、
持ち運びも楽になったとのことです。

非常に興味深い製品ですね。

尚、限定88台とのことですので、
もし急ぎほしい方は冒頭のHPから注文ができると書かれています。

 

 

EXXEO のリリースから考えるべきこと

従来のピアノの構造はほぼ完成されているということを受け入れながらも、
大幅な形状変更を実現した今回の製品。

大量生産というものとは一線を画すアプローチではありますが、
学ぶべきこともあると思います。

一番大きいことは、

「コンセプト設計を徹底している」

ということです。

EXXEO の今回出したような電子ピアノは世の中に存在していません。
それでも違うものを生み出せたという点で注目すべきはコンセプト設計を十二分に行っていた、
ということではないでしょうか。

環境違いによる演奏への影響を最小化し、
アナログに近い電子ピアノを作り出す。

上記のような考えが根底にあると感じています。

実際に今回の開発に関わった方々はデザイン系(機械設計というよりは、外観デザイン)のようです。

上記のコンセプトを根幹にしながらも、
具現化するための設計を行ったと想像します。

さらには、構造設計だけでなく、

「音響設計にもこだわった」

というのも大きいでしょう。

今回のピアノの形状はもちろん、
パンチングメタルのようなものが上部に乗っているのも、
恐らくは音響の最適化を狙った設計であると考えます。

このように外観デザイン設計、音響設計、構造設計、工程設計という幅広いスキルが、
注ぎ込まれていると感じています。

感性に訴えかける製品はコンセプトが最重要である一方、
複数の要素技術に関するスキルを集約することが肝要です。

FRPを用いた製品開発におけるご参考になれば幸いです。

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