「 機械設計 」連載 第二十七回 FRPの薬品・溶媒劣化とその評価方法
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連載開始に関するお知らせについてはこちらをご覧ください。
日刊工業新聞社が発行する月刊誌、「 機械設計 」において
「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」
という題目での連載の第二十七回目です。
2021年4月号の連載では
FRPの薬品・溶媒劣化とその評価方法
という題目で書いています。
2021年4月号は以下のURLから概要をご覧いただけます。
https://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00001016
FRPの特性が熱硬化、熱可塑に限らず湿度によって変化することを「 機械設計 」連載 第二十五回 吸水によって大きく変化するFRP特性と吸水のメカニズムで、その具体的な評価方法を「 機械設計 」連載 第二十六回 FRP吸水特性評価方法 ASTM D5229で述べました。
実際にFRPが特定のアプリケーションとして用いられる場合、暴露環境に影響を与えるのは湿度、いわゆる水分だけではなく、酸、アクリル、有機溶媒(有機溶剤)等のある特性を示す「流体」もあります。
三次元架橋の無い熱可塑性FRPではポリスルフォン系のHTAをマトリックスとするCFRTPがB737の Flight Spoiler として実際に先行搭載され、主に油圧オイルに含まれるリン酸エステルで劣化したことから採用が見送られたという実例もあります。
また強固な三次元架橋構造を有する熱硬化性FRPであっても、例えばエポキシだと塗料の除去剤にも含まれる塩化メチレンで劣化することがわかっています。また最近の文献からもエポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするFRPにおいて、酸にさらされた場合に内部電場発生による浸透拡散速度向上が原因で膨潤速度が向上し、この体積増加がマイクロクラックなどの機械的損傷につながるということがわかってきています。
更に厄介なことにこれらの流体暴露による劣化は、ある程度の長期期間経過後にその影響が顕著化する例もあることです。こちらも実際のデータを用いて解説します。
そして実際の評価方法としては、FRPの異方性を考慮し、吸水特性の時と同様、圧縮で評価することが望ましいでしょう。ただ、圧縮は試験そのものに高い技術的知見が必要なことから、連載の中では他の試験方法の提案も行っています。
FRPの流体暴露によるFRP特性変化について基礎知見を習得したい方々のご参考になれば幸いです。