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天然繊維を用いたBPREGの熱可塑性プリプレグ Vol.178

2021-07-29

持続可能な地球の実現に向け、SDG’s等の取り組みが世界中で盛んになっています。
中には、表面的な部分だけ環境にやさしいとうたいながら、
陰で問題行動を起こす企業も存在するなど、課題もあるようです。

ただし、今の世界の流れとして環境を意識した取り組みは不可避になりつつある、
という観点だけで見ると基本的には歓迎すべき流れと考えられます。

そしてその流れはFRP業界でも同じです。

今回はFRP業界の中で材料という切り口でリリースされた、
BPREG の天然素材を用いた熱可塑例プリプレグ材料についてみてみたいと思います。

 

 

BPREG とは

BPREGというのは社名です。
天然繊維を強化繊維とした複合材料を基軸に、
材料の研究開発と製造、販売を担う2017年に誕生した企業のようです。

BPREGの企業案内のページもあります。

Luxembourg Institute of Science and Technology ( LIST )や、
ThermoPlastic composites Application Center ( TPAC )をはじめとした研究機関との連携に加え、
熱可塑プリプレグの販売代理パートナーとして BUEFA Thermoplastic Composites とも連携しているようです。

BUEFA Thermoplastic Composites については、HPで概要を見ることができます。

さらにEU補助事業で持続可能な材料、設計、製造に向けたプロジェクトである NATALINA に参画しており、
天然繊維を用いた繊維強化複合材料というテーマに取り組んでいるとのことです。

本社はトルコのアナトリア半島西端の Izmir という場所にあります。

 

 

BPREG の特徴

BPREGから入手した資料によると、
以下のような特徴があると書かれています。

– Polypropylene / Polylactic acid as matrix options

– Available partly bio based or %100 biodegradable

– 0.3 mm thickness; 1.5 m width (max)

– Compatible with varied structures such as woven fabrics, mats and honeycomb

– Produced without effluent, hazardous air pollutants and waste; no VOC emission, non allergenic

– Available in rolls

注目すべきはマトリックス樹脂がPPとPLAに限定されていることです。
PPはご存知の通りポリプロピレン、PLAはポリ乳酸のことです。

前者はオレフィンの一種で熱可塑性樹脂、
後者は生分解性材料の一つです。

また、基材構成として織物、マット、ハニカム等の形態があるのも注目すべきところです。

 

加えてBPREGが強調しているのが、天然繊維の密度。

主に亜麻で、密度は炭素繊維と同等なので、軽量化にも貢献できると述べています。

 

 

BPREG の製品ラインナップ

主には一方向材であるUDプリプレグ、
織物のプリプレグ、樹脂未含浸のドライ繊維、
そして平板(いわゆるラミネート材)とのことです。

BPREGの製品ラインナップはHPで紹介されています。

UDや織物のプリプレグでは、上述の通りマトリックス樹脂はPPかPLAです。
ドライ繊維は亜麻の繊維だけでなく、バサルト繊維とのハイブリットや、
熱可塑性樹脂繊維を組み合わせたコミングルヤーンもあると書かれています。

 

その他にも全体的な特徴として、

– 一般的な熱可塑性プリプレグ成形プロセスが適用できる

– 熱可塑性故にリサイクルしやすい

– 色付けも可能

– 短時間の難燃性

といったことも書かれています。

 

BPREGから入手した資料によると、プリプレグの目付はおよそ250から300g/m2のようです。

また、プリプレグだけでなく、1/4、1/2、1 inch幅のスリット材料も販売しており、
これについては BUEFA Thermoplastic Composites との共同開発品のようです。

自動積層を意識した製品といえます。

積層板についてはUDもしくは平織、朱子織が可能であり、
最大2.5mm厚みで要望に応じて製作するとのことです。

 

 

 

今回紹介した内容について考えるべきことは何でしょうか。

 

大きく分けると2点です。

まずはBPREGが重視しているように、環境を意識した製品や取り組みは不可欠であるということです。

FRPはリサイクルなどがほとんど行われていない一方、
これから廃棄物が増えていくことが確実視されています。

そもそもFRPは有機物と無機物という相容れないものを強引に一体化していることもあり、
材料としての再利用が難しいということは想像に難くありません。

実際に実現できるかどうかは別としても、
FRP業界でも環境を意識した取り組みへの必要性は高まる方向にあるといえます。

 

もう一つが積層板としての販売をしているということです。

材料を販売する場合、繊維メーカーは繊維で、
樹脂メーカーは樹脂で、プリプレガーはプリプレグで、
といった形で販売するのが一般的です。

しかしユーザー側の目線から見ると、
欲しいのは繊維でも、樹脂ではなく、

「積層体である」

というのは意外かもしれません。

材料のスクリーニングには、材料物性を取得するというのが第一歩だからです。

試験片加工用の平板、すなわち平板が無ければ、
物性取得に向けて材料試験を行うことはできません。

いきなりプリプレグを欲しがる企業もいるようですが、
普通に考えればその企業は自分たちで平板を製作するはずです。

 

この場合、ユーザーとしてはこの平板を作るというのが手間なのです。

 

その平板を購入できるとなれば、
材料スクリーニングに向けた手間が省けるという意味で、
大変大きな一歩でしょう。

 

この心理を先読みしているBPREGは、ユーザー心理をよく理解していると感じました。

 

尚、スクリーニングにおいて材料メーカーのカタログ値を参照するという考えもあります。
これはこれで間違いとは言えませんが、どこかの早いタイミングでは自分たちで材料物性を評価することは不可欠です。

積層配向、成形圧力、成形温度等はユーザーによって異なる一方、
これらのパラメータが材料物性に影響を与えるからです。

 

BPREGはユーザー側の要望に応じたプロセスでの平板成形に対応するでしょうから、
プロセスデータと積層板をセットで納入してもらうという前提であれば、
平板成形を委託するのはユーザーとして魅力的なアプローチです。

 

課題としては間違いなく基本材料物性が公開されていないということです。
材料メーカーに多い姿勢ですが、構造部材として使われることを想定しているのであれば、
基本物性は見える形で公開するのは必要条件かと思います。

 

 

天然素材を主体としたFRP。

これからますます身近なものになっていくのかもしれません。

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