CAD-PRO Xpert laser projection systemの新型がリリース
レーザー照射機器を販売するLAP GmbHが、新しいレーザープロジェクション機器であるCAD-PRO Xpert laser projection systemを発表しました。
概要についてご紹介したいと思います。
レーザープロジェクターを使用するのはFRPの裁断と積層
改めて、レーザープロジェクターをFRP成形体生産工程でどのように用いるのか簡単に振り返ります。
シート形態のFRPを裁断するには複雑なカットパターンが必須
高い特性の求められる構造部材に用いられるFRPは、炭素繊維を強化繊維としたCFRPです。
CFRPはその多くが、樹脂が強化繊維にあらかじめ含浸されたプリプレグでシート形態です。
このような平面シートを複雑な三次元形状成形物にするには、投影図を参照とした複雑なトリミングラインを有する材料を、何層も積層しなくてはいけません。
この複雑なトリミングラインのことをカットパターンといいます。
裁断機があれば、そのトリミングラインのデータをインプットすれば自動裁断できます。
裁断機の使用が困難な場合は手による裁断が必要
しかし裁断機を持っていない、もしくは小さくかつ複雑な形状で裁断機が使えないという場合、手による裁断を行うことがあります。
裁断すべきトリミングラインを光の情報として教えるのが、レーザープロジェクターになります。
なお、裁断したFRPをどの順番で積層すべきかといった採番表示することも重要な役割です。
積層(レイアップ)はレーザープロジェクション技術が古くから活用されてきた
積層には、比較的古くからレーザープロジェクターが用いられてきました。
レーザープロジェクターにより、FRP積層について
・材料選択
・積層位置
・主たる強化繊維の配向
といった情報を光学的に表示できます。
レーザー光の枠に合わせ、指示されたカットパターンで裁断された材料を貼り付けていくイメージです。
熱硬化性樹脂をマトリックスとする場合はFRP材料にタック性があるのでこの工程はやりやすいですが、これが熱可塑性樹脂になるとタック性がなくなるため難しくなることも加筆しておきます。
新型CAD-PRO Xpert laser projection systemは何が変わったか
新型CAD-PRO Xpert laser projection systemに関する概要は、以下の動画でご覧いただけます。
本製品の仕様はLAPのHPで見ることができます。
以前(2020年)、この製品をコラムで取り上げたことがあります。
その情報も適宜参照しながら述べていきます。
※関連コラム
FRP積層精度向上に寄与する Projection 技術動向
レーザー照射回路が2つ増加
一番大きな変化といえるのがここなのかもしれません。
レーザーを照射する回路を従来の1つから2つにしたようです。
これがいわゆるバックアップとして機能することで、仮に一つが故障したとしても製品としての機能を果たせるのが狙いにあります。
一度故障すると修理に何週間、場合によっては何か月もかかっていては仕事にならないということなのでしょう。
この仕様変更により、装置外寸は大きくなり、重量も増加しています。
2020年仕様
装置外寸: 300 X 110 X 110 mm、重量: 3kg
2024年仕様
装置外寸: 340 X 110 X 110 mm、重量: 4kg
レーザー照射精度向上
これも大切な進化です。同様に比較してみます。
表現方法は多少違いますが、一般仕様と高精度仕様があるとご理解いただければいいかと思います。
2020年仕様
CAD-PRO: +/- 0.20 mm/m
CAD-PRO HP (high precision) +/- 0.06 mm/m
2024年仕様
±0.1 mm/m (S ? Standard)
±0.05 mm/m (HP ? High Precision)
レーザー表現色の増加
これも大切な進化です。
2020年仕様
3色:緑色、赤色、黄色
2024年仕様
6色:水色、青色、桃色、赤色、緑色、黄色
イメージ画像は以下になります(動画から抜粋しています)。
ref: Explore the features of CAD-PRO Xpert (Video)
最後に技術的なポイントを述べます。
レーザーの危険性を理解して使用する
これは言うまでもないのですが、レーザーが目に入ると危険です。
クラスによるのはその通りですが、危険はあるという前提で使用することが求められます。
新型CAD-PRO Xpert laser projection systemの紹介でも、人がもし照射領域に入ると自動的に消灯する機能がある旨、触れられています。
製造業は安全第一であることを忘れてはいけません。
カットパターンはできる限りシンプルにする
既述の通り、平面シートを重ねて複雑な三次元形状を作るのがFRP成形体制作の基本です。
FRPの賦形性に依存し、複雑なカットパターンをデータとして作るのは簡単です。
しかし、実際にそれを”安定して作り続ける”のは容易ではありません。
FRPの業界は少量多品種、試作を主とした動きが多いため、少し無理をした設計も散見されます。
設計の基本は
「本質に注力し、細かいところはシンプルにする」
です。
複雑な形状を設計し、それに応じた複雑形状のトリミングラインを強要してはいけません。できる限りシンプルに表現するためにはどうすればいいのかを、設計者は考えるべきです。
形状を変えずに材料だけ変更する”材料置換”という考え方がFRPには不適切なのは、このような背景もあるのです。
ご参考になれば幸いです。
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