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CF/PAの3D printing成形体の小型衛星規格3U CubeSat向け一次構造材への適用

2024-08-05

CubeSatは小型衛星の規格で、1Uから6U、W6Uという7つの規格があります。

1Uから6Uは縦×横は10cmx10cmと決まっており、
規格番号に応じてそれぞれ以下の高さが決まっているとのことです。

  • 1U:10cm
  • 2U:20cm
  • 3U:30cm
  • 4U:40cm
  • 5U:50cm
  • 6U:60cm

また、W6Uは縦×横×高さが10cmx20cmx30cmであり、3U CubeSatよりも横が10cm大きなサイズです。

 

※参照情報

超小型衛星の放出(J-SSOD)

 

今回は3U CubeSatの一次構造材に炭素繊維とポリアミドを組み合わせたFRP(以下、CF/PA)を、
3D printingで成形したものを適用したという技術についてご紹介します。

 

 

小型衛星について

CF/PAの3D printing成形体の小型衛星規格3U CubeSat向け一次構造材への適用

Image above was drawn by AI by ordered “drawing cube satellite image, which is in the space”.

 

昨今、日本を含む世界中で小型衛星の議論は活発化しています。

一番の理由は取り組みに対する障壁の低さでしょうか。

ここでいう壁は予算です。

民間でこの世界を先行するSpaceXは以下のHPで50kgであれば、
30万ドル(約4500万円)で打ち上げるといっています。

超小型である CubeSatであれば、
重量単価の単純計算で数百万円程度の予算で宇宙空間に打ち上げられる見積もりとなります。

概要見積もりはSpaceXのトップページのサイトに数値を入力すればできます。

 

一つの打ち上げ機に多く搭載できるのも強みです。
小型の宇宙衛星を多く打ち上げられれば、
GPSを例にすればその位置精度を高めることができます。

この辺りはNASAも動画で述べています。

 

 

日本でも取り組みが盛ん

日本であれば既に参照情報として紹介したJAXAに加え、
中須賀真一先生がこの領域では有名です。

今年打ち上げに失敗したカイロスについても、
明快なコメントを出されています。

カイロス打ち上げのネット中継を私も拝見していましたが、
中須賀真一先生は、カイロスの打ち上げ直前イベントでも話をされていました。

 

※参考情報

カイロス失敗「時間をかけずに次の打ち上げを」東大・中須賀教授が語った「2つの大事なこと」

 

 

CF/PAを3U CubeSatの一次構造材に用いた技術資料の概要

本題であるCF/PAの3D printing成形体の小型衛星規格3U CubeSat向け一次構造材への適用について、
参考にしたのは以下の情報です。

Windform(R) XT 2.0 Use as 3U CubeSat Primary Structure

2023年の37th Annual Small Satellite Conferenceで発表された内容で、
3D printingでCF/PAを材料として構造部材を成形したものについて、
評価内容やそこから得られた教訓などが述べられています。

技術会議資料ですので論文のような詳細というよりも、
概要が記述されていることから比較的読みやすいと感じる方もいるかと思います。

 

FRP材料については本項の後に改めて述べますが、
最初にこの技術資料の概要について触れます。

 

 

評価対象である小型衛星の用途

GPX2という名の通り、GPS向けの衛星であることは明らかです。

これに加えてイリジウムアンテナを搭載していることから、
衛星電話向けの設備も有していることが分かります。

どちらの機能も数が多いほうが精度向上や途切れない通話が可能となるため、
数を稼ぎたい戦略に小型衛星という形態は理にかなっているといえます。

私も会社員時代に北米の僻地で試験に立ち会ってデータを取得したことがありますが、
普通の携帯電話は通じないので衛星電話を持って行った記憶があります。

当時”衛星電話での通信料は大変高額なので使用は最低限に”と何度も念押しされましたが、
イリジウムアンテナを搭載した小型衛星が増えつつある現代では、
もう少し身近なものになってきているのかもしれません。

 

 

シミュレーション

主に熱解析と応力解析を含む構造解析を行っています。

 

熱解析

宇宙衛星が軌道を周回している間、
太陽光が当たっていれば高温になり、陰になれば低温となります。

参照した技術資料内のTable 7には、
小型衛星が周回している軌道上での温度データが記載とありますが、
データが見当たりません。データの取り扱い性の観点から、意図的に消しているのかもしれません。

ただし温度差が生じることは事実であるため、
熱解析による予測を行っています。

使用しているのはAnsysのThermal Desktop(R)とのこと。
比較的使用しやすいソフトウェアのようで、
AutoCADベースで動かすことが可能のようです。

周回軌道に入った小型衛星に生じるであろう温度変化をインプットし、
異方性を考慮した熱伝導率の情報に基づき、
熱の伝わり方、蓄熱の様子を確認したと考えられます。

モデルは形状を模擬したモデルデータを基本としたSolidを使い、
壁面などは厚みを定義の上で薄板としてモデリングしたようです。
明確には書かれていませんがShellモデルではないと推測します。

また構造部材と中に搭載する電気設備を分けて解析しているのも特徴といえます。

モデルはできる限りシンプルにするため、
複数種の材料で構成されているものは、
それを平均化の上で一層として扱うと書かれています。

このような工夫はCAEを効果的に実行するうえで不可欠です。

 

 

構造解析

後述する通り、構造部材に用いられたFRP材料には異方性があります。

この異方性を考慮し、

「最も強度が低い方向を選定し、その方向への引張強度を評価する」

ことが構造解析の基本コンセプトであると書かれています。

メッシュはTet10(テトラメッシュ/二次要素)、
HEX8(ヘキサメッシュ/一次要素)、
WEDGE6(ペンタメッシュ/一次要素)を用いたSolidモデルとのこと。

テトラメッシュで二次要素を使うことはかなりの計算量の増加につながりますが、
一次要素では精度が不足したということなのかもしれません。

※参考情報

設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法(4)

 

Tet10はシャーシ、シャーシカバー、レール、
HEX8とWEDGE6でソーラーパネルと自己進展機構のメッシングに使用しているとのことです。

締結部はCBUSH要素で固定していると記述があります。
Rigid Body element type 2という剛体接続で、
締結部の定義をしているようです。

なお、この締結部はシミュレーションでは予測しきれないため、
後述する実試験で評価していると述べられています。

CAEに依存せず実試験を併用して実施するという、FRP設計では”必須の考え方”です。

 

 

試験

ボルト締結部についてへリコイルの引張試験と Break-loose torque試験、
構造体全体に対しては加振試験と冷熱サイクル試験を実施しています。

 

1. へリコイルの引張試験

へリコイルは商標によってヘリサートなどと複数の呼び方がありますが、
言ってしまえばFRPを含む樹脂部品にボルトをねじ込むための溝を担う、
ばねのような形状をした金属部品のことです。

金属ではタップによりねじ穴の加工を行いますが、
FRPなどは金属に比べクリープ強度や剛性が足りないため、
ボルト締結の際に生じる強烈な締め付け荷重によって母材側が変形や破損をしてしまい、
結果として締め付け荷重が低下するという事象が発生することから、
へリコイルを用いるのが一般的です。

小型衛星ではへリコイルを用いてボルトで構造部材同士を締結しますが、
3D printingで成形されたFRP構造体の穴にへリコイルを挿入の上、
ボルトを締め付けます。

このボルトごと引き抜く際の荷重を評価するというのが試験の概要になります。

試験のイメージ図は技術資料のFigure 11に示されています。

そしてへリコイルは軸心がぶれることもあるようで、
実際にX線CTで軸心がぶれたヘリコイルが技術資料中Figure 9の画像で示されています。

 

2. Break-loose torque試験

この試験については手順を記述したほうが分かりやすいかもしれません。

へリコイルが埋め込まれたFRP供試体の平板にボルトを締結し、
それを取り外す一連の手順でのトルクを計測する試験です。

  • (1) 規定よりも少し高めのトルクで締め付ける。
  • (2) 表面を粗したFRPをIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄する。
  • (3) ねじゆるみ止めの接着剤をボルトの頭と周辺のFRPに塗布し、硬化させる。
    →複数種のサイズのボルトと接着剤を使用しており、
    接着剤はどちらもエポキシのLoctite EA 9394、3M Scotch Weld EC-2216 BAであると書かれています。
  • (4) ボルトを緩める作業を実施し、ボルトが動く際の最小トルクを計測する。
    →このボルトを緩める作業のことをBreak-looseといっているようです。

試験片のイメージ図は技術資料中のFigure 12に示されています。
試験後の典型的な破壊はボルトの頭から接着剤が脱落し、
FRP上には接着剤が残っているとのこと。

私の経験的にもFRP/金属の接着において、
接着破壊界面は金属と接着剤間であることが一般的ですので、
この結果は妥当と感じます。

最終的には粘度が低いと液だれをするということで、
3M Scotch Weld EC-2216 BAが選定されたと書かれています。

 

3. 加振試験

組み上がった打ち上げ用ではない予備の小型衛星をアルミフレームに固定の上、
加振機の上で様々な周波数を含む振動を加える試験です。

どのような周波数でどの程度の加振を行ったのかは明記されていませんが、
加振試験前後でスウィーピング、つまり固有値を調べたところ変化が無く、
振動解析で予測された固有値と概ね同等だったとのこと。

固有値計測には加速度センサを供試体に接着剤やボルトで締結したうえで使用しますが、
このようなちょっとした重量増加で固有値は変わるため、
同位置にセンサをつけられない機器を実装した実機では該当する箇所に試験タンクを取り付けるなどして、
加振試験と実機の状況は合わせたようです。

損傷が見られれば固有値の変化が認められることを念頭に、
加振試験前後でFRP構造体に損傷は認められなかったとの記述があります。

 

4. 冷熱サイクル試験

低温と高温の環境を繰り返す冷熱サイクル試験です。

複数個所に温度計を取り付け、
低温から高温環境に環境が変化した場合、
小型衛星の主に内部がどのような温度履歴を示すかを計測しています。

温度計測位置は技術資料中のTable 5に詳細が示されています。

興味深いのはこの冷熱サイクル試験を、
熱圏を模擬して減圧環境で実施していることです。
宇宙衛星ならではの評価といえます。

高温環境、低温環境にそれぞれ4時間暴露し、
温度変化は4℃/minにしています。

試験そのものは2サイクル行ったと書かれています。

構造部材と搭載する電子機器の温度を計測したとのことですが、
結果の詳細は記述されていません。

冷熱サイクルについては最近も取り上げました。

 

※関連コラム

GFRPの機械・物理特性に対する冷熱サイクルの影響に関する研究

 

 

使用している材料はWindform(R) XT 2.0

ここから使用しているFRP材料について述べたいと思います。

まず使用されている材料ですがWindform(R) XT 2.0というものです。

このページの内容と今回取り上げた技術資料のデータも踏まえながら、
ポイントを述べたいと思います。

 

材料形態は粉末で3D printingにより成形

3D printingというよりも、ラピッドプロトタイプという言葉の方がイメージしやすい方もいるかと思います。

この技術はもともと小玉秀男氏という日本人の技術者の方が、
光硬化樹脂を使用した積層造形法を提案したことが始まりといわれています。

Windwormを材料とした成形法は、
例えば以下のような動画がありますので、
そちらをご覧いただくと理解できる部分が増えるかもしれません。

平面にならした粉の上に、レーザなどで熱をかけて断面形状を焼結により成形し、
少しだけ面を下げて新しい粉をまた上にかけて焼結する、
ということを繰り返して成形します。

技術資料でいうとFigure 2に該当するイメージ図の掲載があります。

単位断面を積み重ねていくため、
複雑な断面形状を簡単に成形できる強みを有すると同時に、
積層する以上、層ごとに段差が生じるという課題もあります。

 

Windform(R) XT 2.0の特性値

こちらはWindform(R) XT 2.0のページでデータシートが公開されています。

今回紹介したような宇宙衛星などで重視される、
アウトガスの要求も満たされると書かれており、
その方面での展開を想定しているようです。

既に述べた通り強化繊維は炭素繊維、マトリックス樹脂はポリアミドです。

基本的な数値を見ていきます。

 

Windform(R) XT 2.0特性概要

 

  • 1. General Properties
    Density (20 °C/68 °F): 1,097 g/cc (g/cm3)
    Colour: BLACK

 

  • 2. Thermal Properties
    Melting point ISO 11357-2: 179,30 °C
    HDT, 1.82 Mpa ISO 75-2 TYPE A: 173,40 °C
    Vicat 10N ISO 306 TYPE A50 176,10 °C

 

  • 3. Flammability Properties
    Burning Test – HB 1mm UL 94: HB
    Burning Test – HB 3mm UL 94: HB
    HB: 水平燃焼試験を指します

 

  • 4. Mechanical Properties
    Tensile Strength UNI EN ISO 527-1: 83,84 Mpa
    Tensile Modulus UNI EN ISO 527-1: 8928,20 Mpa
    Elongation at break UNI EN ISO 527-1: 3,80 %
    Flexural Strength UNI EN ISO 178: 133,00 Mpa
    Flexural Modulus UNI EN ISO 178: 7338,20 Mpa
    Impact Strength Unnotched (Charpy 23°C) UNI EN ISO 179: 22,43 KJ/m2
    Impact Strength Notched (Charpy 23°C) UNI EN ISO 179: 4,72 KJ/m2
    Impact Strength Unnotched (Izod 23°C) UNI EN ISO 180: 19,26 KJ/m2
    Impact Strength Notched (Izod 23°C) UNI EN ISO 180: 5,30 KJ/m2
    Hardness Shore D UNI EN ISO 868: 79
    Poisson Ratio ASTM D638-14: 0.41
    Compression Strength ASTM D695-10: 120,2 Mpa
    Compression Elastic Modulus ASTM D695-10: 6,18 Gpa

 

  • 5. Electrical Properties
    Resistivity, Volume ASTM D257: <10^8 ohm*cm
    Resistivity, Surface ASTM D257: <10^8 ohm

 

  • 6. Surface Finish
    After SLS Process: 6,00 Ra μm
    After finishing: 1,8 Ra μm

このデータについての私見を述べます。

 

Windform(R) XT 2.0の特性について

いくつか気が付いたポイントを述べます。

 

A. 密度

密度は低いです。個人的にはこの低さは微小な空隙が多く存在するためではないかと感じています。

親水基を有するポリアミドに含まれる水分が、
焼結時にボイドの原因となっているかもしれません。

炭素繊維の密度が約1.6g/cc、ポリアミドが約1.1g/ccであることを考えれば、
含有される繊維量にもよりますが1,097 g/ccという値が明らかに低いと感じると思います。

私自身はあまり3D printingを材料として扱ったことが無いのでよくわかりませんが、
最も気になった点の一つといえます。

 

B. 難燃性

UL 94でHBとのことです。
Vではないのでそこまで難燃性が高いわけではありません。

ポリアミドは難燃グレードが普通に売られているくらい、
難燃性を高めることが比較的容易な樹脂の一つと考えています。

ではなぜこの材料の難燃性がそこまで高くないのかについて、
その理由はアウトガス要件に由来するのでは、
というのが私の意見です。

難燃性を実現する分子設計は難しい

難燃性を高めるためには、原料を見直して重合体の主骨格を見直すというやり方もありますが、
かなり難しいはずです。

ジアミンとジカルボン酸の重縮合反応、もしくはカプロラクタムの開環重合によってポリアミドは得られます。

主骨格、つまり主鎖の構造を変えるにはこれらの原料構造を変えるしかありません。
ただ反応する官能基は決まっているため、
できるとすれば官能基で挟まれた炭化水素の部分の構造を変えることになります。

ここの構造を変える、例えば分子量を上げる、枝分かれ構造を導入するなどの対応をしたとしても、
難燃性という特性に対する高分子の挙動が大きく変わることはないと私は考えます。

かと言って、難燃特性を発現するヘテロ原子(Sやハロゲン原子等)を導入するというのも、
言うは易し、行うは難しです。電子吸引性や同供与性の変化で電子雲の状態も変わるため、
ポリアミドそのものが合成できない、仮にできても原料の毒性が強い等のリスクもあります。

これらを念頭にすると、恐らくですが

「難燃性の発現は添加材が担っている」

となります。

添加材は低分子量のものが多いため、
熱が加わると主材料であるポリアミドよりも揮発しやすいでしょう。

これがアウトガスにつながるため、宇宙用途を想定した場合、
添加材は使えないのではないでしょうか。

よって、この材料の難燃性は低くなったと考えます。

 

C. 引張、曲げ、圧縮

メーカのデータシートを見る限り、
正直に申し上げて、ポリアミド単体と比較して特段特性が高いわけではありません。

ガラス繊維で強化したポリアミドの方が特性が高いのではないか、
という部分もあります。

ただし、弾性率は比較的高めであることから、
構造部材の中で剛性向上を狙うのが炭素繊維を添加した基本コンセプトなのでしょう。

破断伸びもポリアミド単体より大きく低下していますが、
構造部材として用いるのであれば剛性を高めるにあたって避けられない犠牲として認識している可能性もあります。

技術資料中のTable 2に示されたデータでは興味深いことに異方性があることが示されています。

これは言われてみればなるほどと思いましたが、
粉をならすときの設備の動きの方向に材料が配向し、
また積層方向でも繊維の連続性が”層ごと”に失われている、
ということを示唆しているのではないでしょうか。

面内のXとYの方向(前者は粉をならす方向:7.6GPa、後者はその垂直方向:3.3GPa)で弾性率が倍半分となっています。
設計者としてはなかなか厄介な相手でしょう。

 

D. 電気特性

例えば抵抗率でいえば10^8 ohm*cmとのことで、
ぎりぎり絶縁体という位置づけでしょうか。

ポリアミド単体であれば10^11 ohm*cmはあるとの理解ですので、
炭素繊維の含有によって抵抗率は低下したことになります。

 

E. 表面粗さ

仕上げなしでもRa6.0μmとのことで、積層方向を言っているのであれば段差が小さいという印象を受けました。

もちろん機械設計の視点からで言うと凸凹があるということになりますが、
作り方を考えれば許容したくなる数値という印象を持っています。

どのくらいの積層ピッチかわかりませんが、
このような凹凸が嫌なのであれば後工程での仕上げは不可欠です。

ただここまで述べておいてですが、
恐らく面内方向のことを言っているのではないかと感じます。
そうだとすると、平滑性はあまりよくないという判断です。

 

表面仕上げをすればRa1,8μmとのことですが、
工程が増えるだけでなく、形状が変わってしまうためできれば回避したいです。

精密機械加工レベルの平滑面が必要ということであれば、3D printingはあまり有効ではないかもしれません。

 

 

まとめ

超小型衛星はこれからますます拡大が想定されているアプリケーションの一つです。

小型衛星規格CubeSatの中で今回は3Uのものを紹介しましたが、
今回の話は他のサイズのものにも共通する話題が含まれていたと感じます。

構造材の材料を選定するにあたり、宇宙では軽量化が徹底した正義であり、
密度が1.0g/ccに近いFRP材料は魅力的だったと考えます。

3D printingは加えて様々な断面形状を有する成形体を容易に成形できるという、
設計自由度があるのも強みです。

シミュレーションや試験も丁寧に行われており、
そこではFRPの異方性や品質のばらつきにも気を配っている技術的視点の広さは、
設計開発の基本を垣間見ることができる好例だと思います。

加えて今回の評価から学んだ教訓として、
線膨張計測の際の供試体の固定位置を減らすこと、
FRPのような高分子を用いるとクリープ現象による締め付け力低下が生じるため、
締結工程の見直しと、運行中の継続したトルク計測が不可欠ではないか、
といったことも議論されています。

この部分については、参照元である技術資料も是非読んでいただきたいです。

3D printingは初期投資が小さく、かつ様々なものを製造できる強みがあります。
そして成形材料をFRPにすることで成形体の剛性が向上することが、
構造部材設計の観点から見て大きな貢献と認識されているのです。

宇宙産業での新たなFRP適用展開としてのご参考になれば幸いです。

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