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CAMX2024 Award Finalistからみる動向

2024-08-26

2024年9月9日から12日の予定で開催されるCAMX2024のCAMX Award finalistをご紹介したいと思います。

 

CAMX Awardとは

CAMXは2024年9月9日から12日の予定で開催される。

Photo credit: CAMX

CAMX Awardについては、こちらのページで概要を見ることができます。

Combined Strength / Unsurpassed Innovation という2つのテーマに対して行うとのことです。

総合力と卓越した発明といったところでしょうか。

 

JECもInnovation Awardという受賞会を開催しており、似たような取り組みとの理解です。

 

今回は2024年のCAMX Award Finalistのテーマを抜粋してお伝えし、動向を考察したいと思います。

 

 

CAMX Award Finalistのテーマ

該当するテーマはCAMX Award Finalistの検索ページより見ることができます。

テーマを見ると今のトレンドをよく反映している印象です。

抜粋の上、いくつかご紹介します。

なお、テーマ名をクリックすると該当ページに移動します。

 

 

A Sustainable, Fully-Recyclable Composite Sandwich Panel Solution for Temporary Housing

 

今や複合材料の業界では必ず出てくるテーマといえます。

このテーマが面白いのはリサイクルのPETをコアに、
強化繊維であるFlaxと豆類から生成したエポキシ樹脂を、
マトリックス樹脂でスキン材を構成しているという点です。

このエポキシはかなり面白いです。

キーとなるのは

「リサイクルアミン」

とのことで、いよいよ硬化剤もリサイクル可能というものが登場したのかもしれません。

これにより、熱硬化でありながら樹脂を再利用できると述べられています。

 

※関連コラム

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Advanced 3D Printing for High-Performance C/C and C/SiC Components

FRPはあくまで複合材料の一種であることを再認識されるテーマです。

マトリックスは樹脂である必要はなく、セラミックスですね。いわゆるCMCです。

自動積層技術を使うことで複雑形状の積層を実現し、欠陥が少ないCMC成形体を実現する3D printingであるというのが趣旨のようです。

 

※関連コラム

FRP自動積層を応用した新しいCMC製造法

 

 

Automating the Design and Manufacture of Composite Tools and Composite Parts Using AI and Computer Vision

 

これも近年のトレンドですね。

人工知能を使い、設計から成形型製造まで自動化したというのが主なポイントのようです。

細かいことは述べられていませんが、
人工知能を育てる機械学習が上述の工程精度向上には不可欠です。

近日発行予定のメルマガでは機械学習について取り上げますので、
詳細はそちらをご覧いただきたいと思います。

当該内容はバックナンバーとして本HPでも公開予定です。

 

 

Composite Tank Dome Reinforcements Validated in Industry Partner Project

 

今注目が集まりつつあるFRP製高圧タンクの製造技術に関するテーマです。

対象となるタンクの種類はType IVなので、樹脂ライナーを含むFRP製です。
このタンクの局面部にCFRPのパッチを使って構造強化を行うとのこと。

パッチプレースメントとは、
矩形のFRPシートを先端が柔らかい接触型ロボットで成形体の上に積層していく技術です。

フィラメントワインディングとパッチプレースメントを組み合わせることで、
使用するCFRPの量を削減するというのが強みと書かれています。

 

※関連コラム

Type VのFRP高圧タンクの登場

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Novel Insulated Structural Composite Panels for Fire Resistant Construction

 

NCFを強化繊維に、添加剤なしで難燃性を発現する樹脂を組み合わせたFRPに関するものです。

建築資材への適用が提案されています。

詳細は不明ですが、樹脂の難燃性発現のメカニズムが技術的なポイントといえそうです。

 

※関連コラム

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High-Rate Hybrid Overmolding of Aircraft Window Cover

 

技術自体は今や古めかしいものになりつつありますが、Over Molding(Over Injection)に関する技術です。

熱可塑性樹脂成形体の上からさらに射出成型でFRP構造物を付加するイメージです。

なぜこれを取り上げたかというと、出口が明確であるところにあります。

FRPはどうしても技術的な観点だけに話が終始してしまうため、
肝心かなめの出口戦略が不明瞭な場合が多いです。

このテーマは旅客機を貨物機に変更する際、
窓を覆うカバーを成形するという明確な出口があります。

従来の機械加工の金属部品を用いるよりも、
低コストで部品重量も低減できるというのが売りのようです。

 

※関連コラム

CF/PEKKの Overmolding 製品の界面融着性評価

 

 

Revolutionary Folding Spine Board Using Innovative Multi-Layer Polypropylene Fabric

 

ストレッチャーに用いる背板をSelf Reinforcing PP tapeを原料とした3D woven、
すなわち三次元織物で成形するという技術です。

Self Reinforcing のFRPはマトリックスと強化材が同一材料であり、
複雑な形状の成形に対する形状追従性が高いという特徴があります。

さらに一般的にはオレフィンのような低密度の熱可塑性樹脂が原料となるため軽量であり、
また耐衝撃性も高いです。

この材料を用いたことで、
わずか6kgの背板ですが150kgまでの重量の搬送に耐えられるようです。

 

※関連コラム

はじめてのFRP Self Reinforcement Composite とは

 

 

CAMX Award から見た動向

最後に今回ご紹介したテーマを踏まえ、業界の動向を述べたいと思います。

 

環境に関するテーマは今や常識

天然繊維、生分解性樹脂といったグリーンコンポジットと呼ばれてきた材料は、
今や常識となりつつあります。

今のトレンドはリサイクル可能な熱硬化性樹脂といえます。

リサイクルをするには材料側を最適化しなければならない、
という原理原則に立ち返っている印象です。

今後もこの流れは大きく変わることはないでしょう。

 

 

AIの積極活用

FRP業界は途上ですが、AIの活用もこれから増えると感じています。

今まで学術業界のみで見られた話が、今回のように産業界にも波及し始めています。

今後の記事でも詳細は述べますが、AIにも課題があり、
さらに言うと適材適所がありそうだということもわかってきています。

この辺りの見極めが重要でしょう。

 

 

まとめ

環境、AI、難燃性、高耐熱複合材、熱可塑性FRP、高圧タンク等がCAMX Awardで評価されているキーワードと考えます。

 

ここ3年程度、傾向があまり変わっていないというのが個人的な印象です。

ただ、それぞれのキーワードに関連した技術は進化を続けているのも事実でしょう。

そして本格的に工業的な投入が可能になりつつあるものもあります。

 

忘れてはいけないのは産業界では結局のところ出口が無いと使用されないということです。

FRP業界が最も弱いといわれる出口戦略をどうすべきかという視点が、
これからますます重要になっていくものと考えます。

 

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