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Cytec CEO interview

2015-10-05

北米におけるプリプレガーの雄、 Cytec のCEOのインタビューがJEC定期刊行誌に載っていましたので、動向把握も含めて簡単にご紹介したいと思います。

尚、この雑誌は電子版は以下の所でも読むことができます。


http://www.nxtbook.fr/newpress/jeccomposites/jcm1509_99/index.php#/4

 

Cytec は全世界での従業員数4600人以上、2014年の収益が200億米ドルという企業です。

http://www.cytec.com/

cytec logo

(Cytec logo above is referred from http://www.cytec.com/.)

 


この業界では知らない人は居ないであろう、メジャーなプリプレガーですが、
つい先日、創業以来150年以上の歴史を持つベルギーの大手化学メーカー SOLVAY に買収されたという驚きのニュースが出たばかりです。

http://www.solvay.com/en/media/press_releases/20150729-Acquisition.html


化学メーカーとプリプレガーが結びつくというケースがこれから増えるかもしれません。

 

プリプレガーも自前で材料開発を進める開発費を捻出するにあたり、
巨大な化学メーカーの一部となった方が原料の部分で融通が利く、
というメリットがあるのかもしれません。

 

さて、そんな渦中のCytecのCEOのインタービューですが、
Cytecのスタンスがよく反映されているものになっています。


それは、


CFRPは今後も航空機が中心になる


というぶれない姿勢です。

 

CFRP関連企業の多くが自動車一辺倒にいく中で、
やはり航空機だ、と主張するあたりがCytecらしく、個人的には好きです。
(ビジネス的に良いか悪いかは別議論です)

 

北米のCytecは最新鋭のターボファンエンジンである LEAP engine へRTM用材料を提供する、と述べており今の段階で50%の売上を占める航空機業界での売り上げ盤石化を目指しているのがよくわかります。

とはいえ、やはり自動車のような量の稼げる業界も無視はできないらしく、
イギリスのHeanorに自動車向けのサポートを行う事業所を構えたとのこと。

 

ただ自動車はOEM対応が主とのことです。

材料開発費を徹底的に抑えたいという意図が色濃く反映されています。

 


自動車業界対応に必要な Large tow の開発は Dralon というドイツ企業とパートナー関係構築して進めているとのこと。

※ Dralon という企業のURLは以下の所にあります。

http://www.dralon.com/en/


Cytec の CEO は非常に興味深いことを述べています。


北米と欧州にそれなりの地位を確立している同社ですが、
自動車へのFRP適用に対する姿勢の差を感じるか、
というインタビューに対し、

「圧倒的に欧州が前進している」

と述べています。

 


これは私が実際に北米と欧州の差を現地で感じられる内容と一致しています。つまり、机上の空論ではなく、実際に現場で感じることなのです。


やはりそれを後押ししているのは、

「欧州連合の排ガス規制」

という恐ろしいレベルの二酸化炭素排出削減目標ということで間違いないようです。


目標を達成できない車両に対して罰金を課すという2019年まであと3年強しかありません。


理屈上、1キロ走行あたり95グラムのCO2排出量という要求を達成するためには、
エンジン(内燃機関含む)、空力性能、タイヤの転がり抵抗を最適化したとしても、
平均で1車両あたり200kgもの軽量化が必要とされており、
CFRPのような軽量化材料を適用することが必須とされています。


このビジネスに遅ればせながら本格的に取り組もう、
でも、やはり航空機が主軸である、
というのが Cytec のスタンスのように感じます。


超高級車に少量材料を提供したという関係を維持しながら、
徐々に出荷量を増やしていくということが戦略であるとも述べており、
自動車産業でCFRPがうまく活用されなかったときに備え、
リスクは最低限にするという極めて慎重な姿勢が垣間見えます。

 

その一方で、航空機産業とは異次元で大量生産が必要となる自動車産業においてCFRPを適用させるため、設備投資、材料開発投資といった投資のお金はFRP業界に集まると予想しており、その流れにも乗っていきたいと、積極的な姿勢も示しています。

 

 

自動車への適用はまだ初期の初期段階にあるFRP業界。


これから航空機産業のように拡大していくのかどうかはわかりませんが、
適材適所が進んでいくことは間違いはないでしょう。

 

自動車をフルコンポジットで、というわかりやすいが戦略の無い流れに乗るのではなく、設計の基本に立ち返りFRPの活用方法を慎重に見極めるという姿勢がこれから淘汰が始まる時代に重要であるに違いありません。


 

 

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