Composite Evolution 社の Flax と Carbon fiber の hybrid材料
FRP業界では欧州を中心に新環境素材、いわゆるグリーンコンポジット( Green Composites )が活気を見せています。
有限の地球資源という観点だけではなく、
「できる限り今目の前にある天然のものをそのままの形で活かそう」
という観点が注目されているようです。
そんな中、 Flax いわゆる亜麻(あま)を強化繊維として用いたものが注目されています。
この材料を積極的に使おうとしている企業の一社が Composite Evolution です。
http://www.compositesevolution.com/
Composite Evolution 社は亜麻に注目している理由として以下のことを述べています。
1.軽量化
亜麻の比重は約1.3から1.4。
ガラスや炭素繊維よりも軽いのは明白です。
2.振動減衰
これは実際にいくつかの論文でも述べられていますが、亜麻は振動減衰に効果があると言われています。
上記の比重も含めてまとまっている表が Composite Evolution 社のHPにありましたので、抜粋しておきます。
(The image above is referred from http://www.compositesevolution.com/wp-content/uploads/2015/03/Reducing-the-Cost-Weight-and-NVH-of-Carbon-Fibre-Components-by-Using-Flax.pdf)
Damping loss factor いわゆる 損失係数 が炭素繊維の倍以上あります。
これは、剛直な炭素繊維と比較し、亜麻は弾力性のある有機繊維の一つであることが主因と考えられます。
FRP業界ではアラミド繊維も減衰効果が高いということで有名です。
ただし、どちらも100分の1程度の損失係数の話をしている時点で際立って減衰特性が高いわけではない、ということはイメージを持っていただけるのではないかと思います。
あくまで構造部材としても用いられる機械特性を有しながら、比較的減衰特性が高い、というレベルの話です。
3.低コスト
あくまで現段階での炭素繊維と比較しての話ですが、
炭素繊維と比較し30%近く安いようです。
そもそも炭素繊維が非常に効果であることを考えると、
現段階ではまだ亜麻もさほど値段が下がり切っていないということが予想されます。
上述の重量に加え、コストについても比較された表がありましたので、参考までに載せておきます。
(The image above is referred from http://www.compositesevolution.com/wp-content/uploads/2015/03/Reducing-the-Cost-Weight-and-NVH-of-Carbon-Fibre-Components-by-Using-Flax.pdf)
4.イメージと意匠性
これは主観的なところなので一概には言えませんが、
天然素材を使用しているということによるイメージアップと、
天然素材固有の外観が付加価値にあると述べられています。
このようなコンセプトをきちんと考慮することが重要であることに異論はありません。
5.親環境性
これはこの手の素材を使う場合は当然の特徴というべきでしょう。
天然由来の素材を強化繊維に用いることの重要性は自明なことです。
6.難燃性
有機素材最大の欠点である難燃性。
フェノール樹脂をマトリックスとしたCFRPに匹敵する難燃性を達成したと述べられています。
人体に有害なものは用いていないと書かれているものの、それ以上の技術的情報は述べられていないため、
詳細は不明です。
7.作業者の安全性確保
あまり注目されることがありませんが、この観点も重要です。
製品を世に売り出すために現場の最前線で作業をする作業者。
彼ら、彼女らの健康や安全まで考慮した材料というのは素晴らしいコンセプトです。
上記のポイントは以下の所に述べられています。
http://www.compositesevolution.com/technical/material-benefits/
Composite Evolution 社は従来の Flax Carbon サンドイッチ構造に加え、
ハイブリットの織物やストランドを最近発表しました。
確実に材料の適用範囲を拡大させようとしていることがわかります。
今回発表のあった材料で注目すべき点は何でしょうか。
一つは天然由来素材を用いることによる環境問題への取り組みと、
その取り組みによるイメージアップを図ろうとする企業戦略です。
ハイパフォーマンスだけでなく、環境に気を遣っているという考えは、
特にヨーロッパで強く求められている思想の一つです。
日本は比較的FRPリサイクルに熱心な国でFRP船舶のリサイクルを開始した事業について以前解説しました。
これからもこの路線を無視することなく取り組んでいくべきと考えます。
その一方で課題は何でしょうか。
やはり最大の課題は、
「強化繊維の吸湿性」
です。
亜麻に限らず有機繊維をFRPとして用いるときにもっとも懸念される問題です。
FRPの多くは炭素繊維やガラス繊維といった「無機繊維」が主体で用いられている主因の一つはこの吸湿性にあるといっても過言ではありません。
吸湿による変形や繊維と樹脂の界面強度低下、そして繊維自身の強度低下。
有機繊維の場合はこのような部分に特に注力すべきということを頭に入れておいていただければと思います。
今日の記事では炭素繊維と亜麻繊維のハイブリット材料についてご紹介しました。