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Lamborghini のCFRP戦略

2015-11-23

自動車の中でも最高級クラスに入る Lamborghini 。
ご存じのようにこの車には多くのFRPが用いられています。

LP-700-4

(The image above of LP-700-4 is referred from http://read.nxtbook.com/wiley/plasticsengineering/september2015/fromspe_supercarsinseattle.html .)


ある意味自動車メーカーの中でも特殊な企業ではありますが、この企業の行っている戦略は一般的な企業にも参考になる部分があると思いますのでご紹介したいと思います。

昔からCFRPを使いこなしてきたというイメージがあるかもしれない Lamborghini ですが、
一次構造材としての設計ができるようになったのは実は最近である、ということはあまり知られていません。


というのも、今も昔も自動車メーカーにはCFRPの設計者が極めて少ないという業界固有の環境があるためです。


この辺りのお話は、来年でのセミナーでもお話させていただきたいと思います。
CFRPの設計者というのは極めて広く、高い視点が必要であるということがわかっていただけると思います。

セミナーの詳細情報(外部リンク)はこちらです。

http://www.johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC160105.php

 

アクセサリーとしてFRPを使い続けていた Lamborghini の状況を一変させたのは Paolo Feraboli という人物の加入でした。


Paolo が加入したのはFRPの本格設計を行う Advanced Composite Structures Laboratory ( ACSL )という研究所を設立させた2007年です。
このACSLはアメリカのシアトルにあります。

本格的にFRPを車体に用いこれまでと異なる車をつくりたい、という Lamborghini の危機感から始まった話とのこと。


結果、2011年以降はほぼ全体をFRPにすることに成功し、700馬力のエンジンで97km/hまでわずか3秒で到達できる車体を手に入れました。


その後、改良を重ね2014年にはアルミニウム合金とCFRPのハイブリットも採用することでさらにバランスの取れた車両の発表につながったようです。


AventatorのCFRP車体の写真を以下に示します。

CFRP_Avendor_chassis
(The image above is referred from http://read.nxtbook.com/wiley/plasticsengineering/september2015/fromspe_supercarsinseattle.html .)

この Poalo は元々ワシントン大学にいた時にBoeingとの共同研究開発の経験もあり、航空機業界の設計思想もある程度理解をしていたようです。


以下のページにも書いてありますが、ACSLはFAAも含めた評価を行っており品質などが最も厳しい航空機業界での経験があるようです。

http://www.lambolab.org/


初期段階で用いていたのはRTM。BMWと同じ戦略ですね。

高級車といえども長繊維のCFRPをハンドレイアップで積層してオートクレーブで、というのはビジネス的に成立しにくかったようです。

ところが、穴あけ加工などをしてしまうと強度が場合によっては40%以上も低下する材料のため、設計に苦労していたようです。

そんな中、彼が目を付けたのはランダムチョップ材。


Boeingとの共同研究開発の中で、この材料は穴あけ加工による強度低下がほとんど見られなかったということを見出していたのです。


その上複雑形状に対する成形性も良好だったのですが、全体的な強度は低下するというデメリットもあり、航空機業界ではなかなか評価されなかったようです。

材料の特徴を踏まえ、量産性も考えた上で実際に適用されたのが、


Forged Composite


というもののようです。

本人談によると、特殊な材料を使っているわけではなく、材料特性と成形特性などに関する知見を融合させたものだと述べています。


形を作る、材料を開発するといったピンポイントの話ではなく、複数の領域にまたがる知見を融合させているというのがポイントですね。

ACSLは Lamborghini はOEM対応をしているようで、日本のHondaや北欧のVolvoなどとの取引もあるようです。


この辺りの詳細情報は以下のHPで確認できます。

http://www.lambolab.org/

 

今回の記事で読み取るべき内容は何でしょうか。

まず第一に実際のメーカーと一線を画したところに専門の研究開発機関を作ったという戦略です。

資金的余裕があるためにできる話なのかもしれませんが、
ある程度独自裁量で研究開発できる環境というのは極めて重要です。

ACSLは現段階では Lamborghini だけでなく他企業とのやり取りもできるかなりの独立性を確保しています。


結局のところこのようなノウハウ構築に時間のかかる部分をコンサルティング組織として独立させて外部資金を調達するというビジネスモデルは、
これからのメーカーの参考になるかもしれません。コアのノウハウは守りながらもある程度切り売りするという考えです。

 

同時にACSLを活用する側の企業にとっても課題があります。

OEMによって形にできても、技術的知見は内部に蓄積しない

ということです。

展開の速い自動車メーカーはどうしても結果を焦りすぎる傾向があります。

結果を焦りすぎる故に、結局今後応用の利く基礎力というのがなかなかついてこないのです。


そのため行き当たりばったりになってしまい、本質的な設計的知見が構築されない、という悪循環に陥ります。

少人数でもいいので、時間と資金を与え、じっくりと腰を据える環境を構築することも重要です。

ただし、この時の少人数に選ばれる技術者、研究者たちは、一度現場の修羅場を超えているというのが前提で、学歴、学位、国籍、性別で判断されてはならないことは言うまでもありません。

 

ご参考になれば幸いです。

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