ARRK がイギリスに CNC 加工施設を開設
日本に本社を構え、ヨーロッパでも事業を拡大している ARRK 。
一部量産も行っていますが、「試作」に注力する代表的なメーカーです。
その ARRK が12,000 sq ft の CNC 加工施設をイギリスに開設しました。
尚、この施設は ARRK の Rapid prototyping の施設と隣接しているとのことです。
この Rapid prototyping において、造形する対象が樹脂のものは 3D プリンタ とも呼ばれていますね。
試作をメインとする企業だけにこの手の設備は主力として動いているに違いありません。
今回の設備では合計10台の加工機を追加したとのことです。
基本的には5軸か3軸とのこと。
特に高速加工に対する顧客要望が強く、これに応える形で増設を決意したとのことです。
費用と手間がかかる試作を専門で担える ARRK のような企業はこれからも伸びていくでしょう。
このニュースに関する記事は以下の所にあります。
http://www.arrkeurope.com/News/ARRK_Opens_New_Rapid_CNC_Machining_Centre_in_UK.aspx
さてFRP業界でもこのような加工技術は極めて重要です。
FRP加工で最も重要な技術は、
「トリミング」
です。
当然ながら穴あけ加工や形状加工を行うこともありますが、FRPの中でも長繊維、特に炭素繊維の場合はあまり好まれません。
長繊維の加工が好まれないのは、加工をしてしまうと繊維を切断してしまうので、
応力伝達と分散を担う繊維という根幹媒体が失われるからです。
途中で繊維を切断してしまっては、せっかくのFRPの特性が発現できなくなります。
もう一つの理由は、炭素繊維の導電性。
導電性というのは金属との接触などにおいて電蝕という恐ろしい現象を引き起こします。
見えないところで徐々に進行した電蝕は、金属を完全に腐食させ、思わぬ事故につながることもあります。
そのため、金属側に絶縁コーティング、中間材の適用、またはCFRP側の加工部分に樹脂によるシーリングを行うといった対策が必須となります。
少し話がそれてしまいましたが、FRPの製品化においてトリミング加工は避けて通れない話です。
トリミング加工手法には、マシニング、ウォータージェット、レーザー、手仕上げなどがありますが、
マシニングが最もバランスの取れた手法といえます。
ただしマシニングにおいて最も難しいのは、被加工体の保持。
ペラペラのバリを加工するときに、成形物の剛性が不足していると加工中に「びびる」という現象が起こります。
つまり加工中に震えてしまうのです。
これが加工精度の大きな低下だけではなく、FRPで最も恐ろしい層間剥離といった内部欠陥につながるケースがあります。
実は、ニアネット成形といってもやはり手仕上げにかなうものはありません。
個人的な経験をベースにするとやはり手仕上げに対する信頼が最も高いです。
当然ながら成形体の大きさにもよりますが、小型、複雑形状に対しては手仕上げが抜群の安定感を発揮します。
生産ラインを設計するときも、手仕上げを行う方の人件費、欠勤確率と自動設備の場合の電気代、故障率、メンテナンス代、部品代、減価償却に加え、両者の不良率、生産個数といった幅広い視点から物事を判断し、利益を生み出すための費用算出は技術的直感だけでなく、経営的観点から考えなくてはいけません。
自動化必ずしも安からず、早からず、そして良からず。
これを忘れてほしくないものです。
今日は ARRK のCNC加工機施設開設のニュースから、FRPの加工について一部ご紹介しました。