Zund が裁断工程高効率を実現する裁断機を発表
FRP成形加工において盲点ですが時間がかかり、後工程への影響も大きい「裁断」。
スイスに本拠地があり、裁断機としては大手の Zund が新しいタイプの裁断機システムを2016年3月のJECで発表するとのことです。
http://www.zund.com/en/zuend-at-jec-world-2016
Zund が持っている裁断機の特徴は以下の動画がわかりやすいと思います。
平面を自動で高速に裁断できる、いくつかの種類の刃物を選び、複数取り付けられるといったこの業界では当たり前のこと以外に、以下のような特徴が見られました。
– バーコードによるカットラインと刃物選択のリンク付け
バーコードを設定しておくと、使用する刃物や裁断条件が自動的に読み込まれ、
もし異なる刃物がついている場合は変更するように警告表示が出る。
– カメラによるエッジラインの判断
画像認識技術により裁断する材料の端面位置を自動的に認識し、それに合わせたカットラインの設定を行うことができる。
これにより、裁断機に対して斜めに置かれたとしても材料の位置を認識し、想定した通りの材料の裁断を行うことができる。
– 3軸でのマシニングが可能
「3軸加工を裁断機で行う必要性はあるのか」というそもそも論はおいておくとすると、できるということについて意外性を感じました。
FRPではなく、上記の動画でもあったようなパネル裁断の時にエッジを斜めにする、といったことを実現したい時には使えるようです。
今年のJECで発表するとしている裁断機の概略図は以下の通りです。
( The image above is referred from http://www.zund.com/en/zuend-at-jec-world-2016 )
最大の特徴は、
「裁断した材料のピックアップにURロボットを用いている」
というところです。
誰しも思いつくところで欲しいと考える製品ですが、現段階ではパッケージ品としてはあまりないのです。
URロボットというのは、Universal Robotのことで色々な工程の自動化において可動アームを提供している会社です。
http://www.universal-robots.com/ja/
切り出したものをその先からピックアップして別の台車や台に載せることで、裁断工程を連続的に行うことが可能となります。
この技術のポイントは2点。
1つは裁断とピックアップの連動です。
この辺りは制御技術なので、昨今の技術進化を見ているとそれほど難しくないのかもしれません。
ただしポイントもあります。
「不具合が起きた時にその不具合を検知できるか」
というところです。
自動で行うということは黙々と動き続けることです。
仮にカットがうまくできていないものを無理やり取ろうとしたら材料がよれて裁断工程が崩れます。
裁断したものをピックアップしたとしても、それを落としてしまうかもしれません。
これら想定される不具合をどれだけ抽出し、それに対して正確に検知する。
欲を言えば、これらをさらに自動で復旧できる。
このような考えのもと工程設計をしなくてはいけません。
そういう意味では無理に自動化するよりも意図的に手作業を入れて不具合が起こった時の異常検知精度を上げる、不具合が起きた時の復旧作業スピードを上げる、というのも一つの考え方です。
自動化は高効率、最低品質向上という極めて高いメリットのある一方で、柔軟性が無い、不具合が助長されるといったリスクもあるのです。
もう一つが、材料のピックアップです。
URロボットを用いるとは書いていますが、具体的にどのようにして材料を持ちあげるのかについては詳しく書いていません。
円盤状のヘッドがURロボットの先端についているイメージ図程度は上記で紹介した概要図から見てとれます。
本点は肝の一つです。
ピックアップする材料がヘッドに収まる大きさのものであればいいと思います。
しかしそれより大きなものであったらどうするのか。
ロボットを2台使うのか、それともヘッドを大きくするのか。
ヘッドを大きくした場合、ロボットの剛性は足りるのか。
扱える材料は樹脂が含浸されたプリプレグからドライの基材まで可能とかいてあるがタック性のあるプリプレグと扱いによってはバラバラになるドライの繊維で同じヘッドで運搬できるのか。
冷静に考えると色々あるのです。
コンセプトは悪くないのですが、量産でそれなりの量が継続して流れるということが保証できないうちはあまり自動化を急ぐよりも、
「どのような不具合が出るのか」
ということをまず学ぶという慎重さがFRP工程設計では重要かもしれません。
上述の通り懸案があるのは間違いありませんが、選択肢が増えることは基本的には好ましいことです。
あとは使う側がその選択肢のメリットと限界を理解し、活用できるのかというところを考えることが重要なのではないでしょうか。
ご参考になれば幸いです。