はじめてのFRP FRP業界への 新規参入
「FRP業界 への 新規参入 を考えている」
という問い合わせが最近増えてきています。
FRP業会 でのビジネス動向が基本的には良好であるとの見方から、続々と参入を考える企業が増えているというのが私の実感です。
新規参入を検討されている企業が非製造業、すなわち商社のようなサービス業の場合はそれほど障害は大きくありません。
現状存在している国内外ネットワークを上手く活用し、ビジネスモデルを構築することができるからです。
その一方で、新規参入を検討する企業が
「何らかの製品を作る メーカー (製造業)」
の場合事前にご理解いただかなくてはならない部分があります。
今日はFRP業界への 新規参入 のメーカーの担当者に向けたコラムを書いてみたいと思います。
FRP業界への 新規参入 を考える企業様にとって重要な点を以下にまとめてみました。
1.自社の強みを事業主軸にする
業界参入においてポイントとなるのはやはり
「現状持っている自社技術」
をどれだけ理解しているのか、という所になります。
業界参入 をご検討されている企業の方々の、実に8割近くが
「今、FRP業界で流行している技術に追従する必要性」
ということを訴えられます。
当然ながらそれがすべて間違いとまではいいません。
ところが今FRP業界でトレンドと言われているものは、
私から見るとすでに一昔前のものである、問題点が多い、
といったケースが多々あるのです。
ヨーロッパの展示会や各種学会誌の情報をそのまま鵜呑みにするケースも散見されますが、これは危険すぎます。
やはりポイントは、
「自社技術を主軸に置く」
ということです。
これは業界での競争力を持つための必要条件といえます。
何故今まで蓄積されてきたことをすべて捨ててまでFRP業界のトレンドに乗ってしまおうとするのでしょうか。
FRP業界の技術は一言でいうと発展途上です。
出来上がったわけでは無いのです。
むしろ、従来の技術を存分に活用、応用するといった原点に立ち返る姿勢こそがこの業界での成功のカギとなります。
自社にて業界参入を検討する場合、
「自社技術の強みは何か」
という原点に立ち返ってください。
2.ビジネス的な結果を焦りすぎない
うまくいかない企業の方に多いのが、
「1、2年で事業として成立させる」
という焦った考えです。
冷静に考えていただければわかると思いますが、1、2年で仮に事業がうまくいくというのであれば既に世界中の企業がFRPで成功し、家電やソフトウェア業界のような展開の速い業界になっているはずです。
特に素材費の高いCFRPに対して、1、2年という短期間で事業化を急ぐのは極めて困難です。
そしてFRP業界で成功している、または深い知見を持っている企業ほど、
「長い時間をかけて事業を育てる必要がある」
ということを良く理解しているということがこの裏付けでもあります。
じっくり育てないと事業化できないということは、裏を返すと寿命が長い事業ともいえます。
企業を将来的にわたって成長させるポテンシャルを持っている事業であることは事実なのです。
それに対してスピード感のある事業は参入障壁が低いゆえにそれだけ競合が多く、
消耗戦になる傾向があるのです。
当然ながら私も契約したお客様に対しては事業の基礎をできる限り短期間で盤石にするための施策を迅速に打ち立てていきますが、それでも数年単位の時間はかかります。
ある程度長期間にわたり、事業の基礎を育てていく。
企業の首脳陣の方々の頭の中にこのような思考回路ができていないと、FRP業会で成功する道のりはより長いものになると思います。
3.成形加工に注力し過ぎない
FRPというのは作られるまでの材料、成形、加工、検査といった一連の工程の結びつきの強い特殊な材料です。
そしてこの一連の工程を全体的に把握するという姿勢が求められます。
しかしながら業界参入を考える企業の方の方針の多くが、
「FRP成形加工のみ」
を前提に考えられています。
もちろん、特殊な技術を持ったうえでFRPへの応用も可能であるというケースもあり、
樹脂や金属しかやったことがなくともその加工技術を主軸に事業を組み立てることは可能です。
ところが成形加工「だけ」しか考えていないケースが多いのです。
上述の通り成形加工はFRPを製品化するにあたって一つの側面を示しているにすぎず、仮に成形加工を事業の主軸にしていたとしても材料(繊維の織り方、プリフォーム、有機化学)や設計(材料規格、工程規格、公差設定、検査要求)、解析(メッシング、拘束条件、異方性導入)、品質保証(非破壊検査、寸法検査、検査結果記録管理)といった点についても最低限の知見は必須です。
なぜならばこれらを知らないとFRPの成形加工の工程を組み立てることができないからです。
材料や設計、そして解析や品質保証についてエキスパートである必要はありません。
それでも幅広い業種のエキスパートと対等に議論できるレベルの知見が無いと、FRP成形加工の最適化はできないということはご理解いただく必要があります。
4.現場に加えて役員の方々の熱意があること
決して精神論を説くわけではありませんが、とりあえず情報収集してみよう、というスタンスではなかなかうまくいきません。
お会いする現場(部長クラス以下)の方は概ね熱意があるケースがほとんどですが、会社としてそれを事業として育てていこう、という所の足並みがそろっていない企業様のケースが実は多いです。
どれだけ現場でその必要性を理解していたとしても、会社として進めるという方向性がある程度定められていない状態ではなかなか前進できません。
組織における役員クラス以上の方々が、
「FRP業界に参入して将来的な新規事業に育て上げる」
という意思表示をできていないと、人、時間、お金といったものを獲得することは困難なのではないでしょうか。
当然ながら役員クラスの方を説得するための材料を一緒に考えてほしい、という依頼が私の所に来るケースはあります。
それでもうまくいく企業様の場合は、ある程度方向性を示せば役員を説得できる、という状態まで現場の方々の努力で既にフェーズが上がってきているのがほとんどです。
いかがでしたでしょうか。
FRP業界への 新規参入 に目をつけられたこと自体は素晴らしいと思います。
ただし戦略を考えず、盲目的に突き進むやり方では成功という文字から遠ざかってしまうリスクが高まります。
FRP業界参入に関しては以下の記事も合わせてご覧いただければと思います。
本コラムを御社戦略の振り返りにご活用いただければ幸いです。