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超音波はんだ のFRP接合技術への可能性

2016-08-24

今日はオートメーション新聞で特集されていました、「ジャパンユニックスのはんだ付け技術基礎知識」という記事から超音波はんだについてご紹介したいと思います。
 


今回の記事を執筆している方が所属するジャパンユニックスという企業ははんだ付け技術に特化した企業のようです。
https://www.japanunix.com/index.php


設立は40年ほど前で歴史もあり、90名の少数精鋭で業界をけん引されている印象です。

ジャパンユニックスが有する技術の中に今回ご紹介する超音波はんだ付け技術があります。


この技術最大の特徴はガラスやセラミクス、アルマイト処理したアルミなどの酸化物に対してもはんだ付けできる、という点です。

液体に超音波振動を与えると、振幅の圧力差によって気泡の小さい空洞が生じるそうです。


これをキャビテーションといい、この空洞が大気圧によってつぶされるときに大きなエネルギー(空洞エネルギー)が発生。

この空洞エネルギーと呼ばれるものを利用し、表面の酸化膜を除去するというのが最大の特徴のようです。


キャビテーション現象の動画の一例を以下にご紹介します。
細かい気泡が発生、消滅している様子が見えます。


従来は表面に酸化被膜があるような材料のはんだ付けには強力なフラックスを用いてその膜を除去していたようです。

フラックスというのは、はんだ金属よりも先に溶融して母材に溶けた酸化物や汚れの除去、はんだ金属の濡れ性向上、はんだ金属の表面を被覆して再酸化を防止、といった効果を持っているとのこと。

この超音波はんだ付けは特殊なフラックスを用いることなく、非金属に対しては酸素を媒介とした共有結合形成を実現することができます。

キャビテーションの熱エネルギーを活用して、溶融した酸素親和力の高いはんだ金属がその酸素親和力をいかして酸素を導入し、この酸素原子と日接合体の酸素原子の間に共有結合を形成させるというメカニズムが推測されているようです。


当然ながら共有結合はすべての結合の中で最強の結合形態ですので、
その結合力はかなり高いものであることが想像できます。


この辺りのメカニズム紹介については以下のHPをご覧ください。

https://www.japanunix.com/method/ultrasonic.php


今回の記事を書いたのは動機付けは、はんだ付けの情報を単に紹介したいというわけではなく、FRP業界において必須かつ困難な技術であるといわれる、


「接合技術」


に関連するものであり、


「FRPと金属の異種材接合」


に応用できる可能性があるのではないか、と考えたためです。

 

FRP業界における接合技術の必要性

 

FRPは軽量かつ高強度ですが、材料の持つその異方性などからどうしても金属との併用による適材適所への採用という設計思想が重要となります。

この時の最大の課題といえるのが


接合技術


です。


どこかで金属とFRPをつなぎ合わせるということを行うことで、全体としてのパフォーマンスを上げるという設計思想を実現するにはこの接合技術をきちんと持ち、それを取り扱得ることが重要となっていくのです。


この金属との接合技術として、


– 機械的接合(ボルト締結など)

– 化学的接合(接着剤など)


という大きく2つのものに分けられます。

当然ながら安全性としては機械的接合の方がはるかに高いため、私もセミナーを行うにあたっては、


「化学的接合と機械的接合の併用によって接合の安全性を高めることが重要」


と毎回お話させてもらっています。


化学的接合が信用できないというわけでは無く、有機物は量産では不可避なばらつきがあるため、万が一化学的接合が外れても安全性などには影響が無いよう機械的にも接合してセーフティーネットを張っておくということの重要性を量産立ち上げで認識した、というのが背景にあります。

いずれにしてもこのような異種材接合に関する技術はFRP業界で常にニーズの高いものとして求められ続けています。

 

はんだ付けを応用できるかもしれないアルミとFRPの接合

 

今回のはんだ付け技術で応用できるかもしれないと考えているのは、今後軽量化金属材料として併用されることが多くなるであろうアルミニウムとFRPの接合です。


アルミニウムは腐食防止に表面にアルマイト処理を施し、その上から接着剤で接着するケースが多いですが、アルミは基本的に接着性があまり高くありません。


例えばエポキシ系の接着剤を用いるとFRPとの接着性は特に熱硬化性の場合抜群の接着安定性を発揮しますが、金属との接着性は決して高いとは言えません。

強度が出ないというよりも、量産でのばらつきが本当に大きいのです。


このような接合に今回のようなはんだ付けの接合技術が応用できれば、少なくとも金属側の接合は安定化することが期待されます。


さらにはんだ付けは接着と比較し量産性が極めて高く、高速接合も可能になる可能性があります。


熱硬化性の接着剤の接着安定性を担保するためには、様々なパラメータを厳しく管理することが必要で、量産性も劣る可能性があります。


当然ながらFRPが導電性のあるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の場合、Calvanic collosion が起こる恐れがあることから、それに対応するための絶縁対策は必須ですが、技術の一つとしては可能性を感じます。

 

いかがでしたでしょうか。

 

接合技術の重要性を訴えるケースは多く見かけますが、なかなか絶対的な決め手に欠けているのも事実です。


接着剤も素晴らしい接合技術ですが、今回のような別の切り口からの接合技術を検討するという幅広い視点も重要だと考えます。

ご参考になれば幸いです。
 

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