CES 2017 からみえるFRP業界の今後
昨日までアメリカラスベガスで CES 2017 という見本市が開催されていました。
( The image above is referred from http://www.ces.tech/ )
CES というものはあまりFRP業界の方にとって一般的でないですが、
マスコミなどでは電機業界を中心に知られる伝統ある巨大展示会になります。
Official HPの説明によると以下のように書かれています。
CES is a global consumer electronics and consumer technology tradeshow that takes place every January in Las Vegas, Nevada.
過去には世界を圧巻した日本の電機業界も老舗のSonyを中心に世界中に様々なものを発信する場として活用してきたようです。
JEC同様、Innovation award なども用意されており、過去にはハードディスク、Blue rayや有機ELなども受賞しており、今の電機業界の主力商品になっているようなものもあります。
参考までにですが、本年の Innovation award には以下の28ものカテゴリーがあります。
- 3D Printing
- Accessible Tech
- Computer Accessories
- Computer Hardware and Components
- Computer Peripherals
- Digital Imaging
- Drones and Unmanned Systems
- Eco-Design and Sustainable Technologies
- Embedded Technologies
- Fitness, Sports and Biotech
- Gaming
- Headphones
- High Performance Home Audio/Video
- Home Appliances
- Home Audio/Video Components and Accessories
- In-Vehicle Audio/Video
- Portable Media Players and Accessories
- Portable Power
- Smart Home
- Software and Mobile Apps
- Tablets, E-Readers and Mobile Computing
- Tech for a Better World
- Vehicle Intelligence
- Video Displays
- Virtual Reality
- Wearable Technologies
- Wireless Handset Accessories
- Wireless Handsets
ワイヤレス、ポータブル、ディスプレイといったものが多いのがわかります。
それぞれ何を受賞したのかについては以下のHPをご覧いただければいいと思います。
http://www.ces.tech/Events-Experiences/Innovation-Awards-Program/Honorees.aspx
急速に距離を縮める機械業界と電機業界
上記のような電気製品に限らず、Popular Mechanics という
自動車、家屋、野外活動、科学、技術の記事を連載する雑誌編集者が選ぶ、
Popular Mechanics Editors' Choice Awards
というものもあり、こちらは電気製品の技術を応用した優れた技術製品に送られるようです。
受賞作品の一覧を示したのが以下のHPです。
http://www.popularmechanics.com/technology/g2906/ces-2017-popular-mechanics-editors-choice-awards/
これを見ると驚きの状況がわかると思います。
日本企業も受賞していますが、受賞したのは Toyota と Honda です。
つまり、機械メーカーが受賞したのです。
Toyotaが受賞したのはYui(ユーイー)というAIを応用した自動車、
Hondaは不倒二輪の Honda Riding Assist という製品です。
Yuiのコンセプト動画
https://www.youtube.com/watch?v=ePfvAUmjYoM
Honda Riding Assistの動画
Yuiについては運転者の考え方や気持ちまで学習した運転サポート、
Riding Assistについては実際にバイクが従業員の後追いをする、
人が乗っても倒れないといったにわかに信じがたい状況が映し出されています。
どちらの企業も自動車をメインとして生産する企業ですが、
ここで紹介されているのはどちらかというとシステムや制御に関する技術がメインとなっています。
一時期流行した人工知能が AI という呼び方に変わり、
製品のコンセプトに応用されつつある昨今を象徴するような流れといえます。
もちろん今までの自動車でも制御技術が多くありましたが、
ここまで制御技術を前面に出したコンセプトや実際の製品が出てくる、
という状況を見たのは今年が初めてではないかと、私は感じています。
これはものづくりの主軸であった機械業界と電機業界という2つの異なる業界が、
急激に距離を縮め両者の融合により新しい製品に対応しようという、
成熟社会に新しいアプローチをかけるという覚悟のようなものを感じます。
FRP業界に求められる今後
上記の状況を踏まえ、FRP業界に求められる今後について考えてみたいと思います。
既に本コラムでも何度か述べていますが、FRP業界の今後の発展と適用の拡大に必須なのは、
– 明確な設計コンセプト
– FRPを機能材料として用いる
の2点だと考えています。
何度も述べていますが、FRPに重要なのは、
「軽量化+α」
のαをどれだけ考えられるかです。
このαを生み出すには明確な設計コンセプトが重要であり、
その設計コンセプトの検討というものが世界中のFRP業界で未熟というのが現状です。
高い視点でものを考えながら、いかにして軽量化と組み合わせるαを捻出できるのか。
ここが設計の本流ともいえます。
このような設計で生まれる材料は必然的に構造材料ではなく、
「機能材料」
となります。
軽量化以外の”機能性”を有しているという意味です。
そしてこの機能性を発現させるための一つの王道的アプローチに電機業界との融合が挙げられると思っています。
FRP業界からこの点に気がついてCESにも出店していたのは以下の企業だけだったようです。
Windformは Carbon の 3D printing 技術を主とする企業です。
彼らがCESで発表したのはヘッドをカーボンとTiで作ったゴルフクラブにセンサーを埋め込み、
ゴルフの Swing に関するデータを取得するという製品です。
http://www.crp-usa.net/ces-2017/
実際のCESにおける動画も以下に紹介されています。
ここで紹介されている製品は炭素、金属という従来の材料構成に
「センシング」
を融合させ、機能材料にしています。
このようなアプローチをしていた企業がFRP業界にもいたことが個人的にはとてもうれしく感じています。
いかがでしたでしょうか。
今後、製品は高額製品と廉価製品の二極化に向かうはずです。
FRP、特にCFRPは現在の所高額製品側の材料として認識されていますが、
材料を使うだけで高額製品にするというロジックが通じるほど世の中は甘くないのではないかと考えています。
単純なものを安く早く作るについてはそれこそ先述のAIや先日も紹介したIoTなどの応用により、
人をほとんどかけずに安定して製品を作れるようになっていくのかもしれません。
そうすると製品単価は低下する一方になり、売上、そして何より利益の激減が予想されます。
いかにして成熟社会でも高額製品を維持し、顧客ニーズに応えていくのか。
技術のより幅広い融合というのがこの答えの一つになっていくのかもしれません。