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取得した FRP材料データ は 信頼 に値するか

2017-09-04

今日のFRP戦略コラムでは取得した FRP材料データ は 信頼 に値するか、
という題目で書いてみたいと思います。


先月、分析、評価機器大手の島津製作所が、
分析データシステム「 LabSolustions 」をアップデートした、
とプレスリリースを出しました。

リリースは以下の所で見ることができます。

http://www.shimadzu.co.jp/news/press/n00kbc000000ddih.html


島津製作所は高速液体クロマトグラフ(HPLC)、ガスクロマトグラフ(GC)、
紫外可視分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計、蛍光分光光度計といった、
代表的な各種分析機器に加え、FRP業界では多用される汎用材料試験機、
いわゆるオートグラフのメーカーとして著名なメーカーです。


これまでHPLCやGCに適用されていた分析データシステムを、
上述の光学分析装置にも適用するようにした、
というのが今回のシステムアップデートの概要です。

個人的に島津製作所の製品が好きなのは、


「分析、制御ソフトが使いやすい」


というところです。


また今回のリリースの中でも LabSolutions でレポートセット機能が拡張され、
GC、HPLC、光学分析の一連データをレポートとしてはきだすことができる、
ということも述べられており、報告書のまとめにも活用できそうです。

 

ここまで読むと、一見今回の戦略コラムの主題と関係ないように感じる方もいるかと思います。

まずは、島津がリリースした内容をもう少し見ていきたいと思います。

 

システムアップデートはデータの確からしさに対する要求対応が主因

リリースの中では、アップデートの背景、ということが述べられています。
一部データの抜粋をしてみます。


< プレスリリース抜粋 はじめ >

医薬品の品質試験は、事前に定められた手順に従って正しく実施され、得られた分析データや試験結果を適切に管理する「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」(GMP:Good Manufacturing Practice)の遵守が求められます。また、製薬企業に対する査察や調査などを行うアメリカ食品医薬品局(FDA)などは、医薬品試験の信頼性確保のためにデータの完全性を求めています。


< プレスリリース抜粋 終わり >

( The press release above is referred from http://www.shimadzu.co.jp/news/press/n00kbc000000ddih.html )


上記を見ていただくとわかるように医薬業界の要望に基づいた、


「データの確からしさ」


というものが主因となり、今回のシステムアップデートにつながっているということが述べられています。

医薬品業界の品質は、そのまま人の命にかかわることであるため、
極めて厳正かつ堅牢なシステムが求められます。

残念ながら日本だけでなく、世界中で医薬開発の不正がでていますが、
その不正を「分析技術」という砦で守るという要望に応える、
という取り組みの一つが今回のリリースなのです。

 

FRP業界で得られているデータの不確実さへの懸念


振り返ってFRP業界でのデータについてみていきます。

多くの方にとってFRPのデータというと材料データになると思います。


様々な場面で自分の目で見る、
またはひとからきいた話を集約して非常に疑問なのが、


「データを取ることに熱意はあるものの、データの確からしさに対する意識が希薄」


というケースが非常に多いということです。


短期間で、お金をかけずに、いかにデータを取るか。


これは開発においてどのような企業でも本音といえる部分です。


しかし、これをその本音のままに進める企業が多いことは、
一言でいうと驚きです。


試験機、ロードセル、ひずみゲージ、ひずみアンプの校正記録、
試験環境温度/湿度、試験片加工用平板の成形プロファイル、
試験片の寸法検査結果(必要に応じた非破壊検査)、試験片の切り出しレイアウト、
平板作製工程表 等。


上記のような記録やデータがほとんどないまま試験データという名目でデータを蓄積するケースが多いことに、驚いている、という以外の表現はできません。

これらのバックデータなしに、得られたデータに対してどうして正式な値といえるのでしょうか。

言い換えると、各種評価を行うことは重要であるということの認識はあるものの、
それが本当に正しい値なのかに対することはほとんど考えていない、
ということが今のFRP業界の大まかな状況です。


これは、日本に限らず海外でも大きくは変わりません。

そして、材料データ取得の旗振りをした技術者が、
全体を見て報告書の形で考察の上でまとめることなく、
試験機のアウトプットしたデータをただファイリングしている、
という流れになっており、時間とお金をかけたデータが全く生かされず、
特定のデータ(例えば平均値など)が独り歩きして開発が進んでいく、
という恐ろしい状況に陥っているという企業は少なからずいるようです。

材料データの中にはスクリーニングのために使うデータ、
例えば材料選定に使うデータもあります。

しかし、仮にスクリーニングデータを取得するにしてもルールがあるのです。

やはり正しいデータを得るためには何が必要なのか、
そして得られたデータが本当に正しいのかということについて今一度考えてみるべきだと思います。

 

各種分析技術の理解はFRPの量産品質保証にも重要


最後に分析技術のFRP品質保証への応用ということについて述べてみたいと思います。


上記でも出てきた赤外分光光度計、それ以外では動的粘弾性等、
FRPを使った製品の量産後に使うべき技術はいくつかあります。


分析というとあまりなじみがない方もいるかもしれませんが、
FRPのPがPolymer、つまり高分子である以上、
分析技術を取り込んで品質管理体制を構築していくということは重要といえます。


実際に適用する材料、作り方、最終製品の要件を踏まえ、
どのような分析技術を応用すべきか、
ということを検討するということも念頭に、
開発業務を推進することが肝要です。

 


今日は島津製作所の分析データシステム「 LabSolustions 」アップデートのリリース記事を入り口に、
データの確からしさへの意識を持つ、
ということの重要性をお話ししました。


せっかく、手間とお金をかけて取得するデータ。


手を抜かず、着実に取得を進めることの重要性を再認識いただければ幸いです。

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