射出成形ができる 次世代ウッドプラスチック
今日のコラムでは 射出成形ができる 次世代ウッドプラスチック という題名で、
アイ-コンポロジー株式会社( i-Compology Corporation )の製品についてご紹介してみたいと思います。
合わせて日本の抱える林業の課題についても考えてみます。
(The image above is referred from https://pixabay.com/ja/photos/deciduous%20forest/)
今年で第7回目の開催となる Biocomposites Conference Cologne 。
天然繊維強化複合材料に着目したドイツでの国際会議です。
開催は2017年12月6から7日。
開催場所は会議の名前にもあるようにドイツのケルン。
場所はmaternushaus(https://tagen.erzbistum-koeln.de/maternushaus/)というところのようです。
以下のURLで Biocomposites Conference Cologne については見ることができます。
ふれこみを見ると天然繊維強化複合材料では世界最大の国際会議とのこと。
250人以上の参加、30以上の企業、研究機関の展示が行われる予定のようです。
会議の主領域は以下の通りです。
– WOOD-PLASTIC COMPOSITES
– BIOCOMPOSITES IN AUTOMOTIVE
– INJECTION MOULDING: GRANULATES AND APPLICATIONS
この中で INJECTION MOULDING の主領域にて同志社大学の田中達也先生が以下の題目で講演をされるようです。
Study on Elucidation of Opening
Fibre Bundle Mechanism in
Manufacturing Process for LFT
Granulate
そんな中、この国際会議で展示する企業の中に i-Compology Corporation という日本企業があります。
会社のHPは以下で見ることができます。
この企業が販売するウッドプラスチックという材料、FRPの中でも非常に面白い材料であると考えます。
以下のページを参考にポイントを述べてみたいと思います。
http://www.i-compology.com/woodplastic.html
射出成形が可能
これは正直驚きました。
上記のHPにも書かれていますが、熱可塑性樹脂を基本とするウッドプラスチックは一般的には押出成形。
FRPの領域だけでいえば押出成形は断面積に大きな変化がない、長尺である、
という製品に対して量産性があるといえますが、
本当の意味での大量生産には向いていないというのが常識です。
その点、やはり高分子関連の成形で抜群の量産性を発揮するのが射出成形。
i-Compology の材料はこの射出成形ができるという点で、
大量生産製品への適用についても製造法という観点で適用が可能といえます。
マトリックスがポリオレフィンでも接着可能
サンドペーパーなどで強化材である木材が表面に出てくれば接着も可能とのこと。
そしてこのマトリックス樹脂はPPのようなポリオレフィン樹脂でも接着できると書かれています。
当然ながらどのくらいの接着強度がでるのか、
どのくらいの表面研磨が必要なのかについては確認が必要ですが、
なかなか面白い切り口での検証です。
ウッドプラスチックの物性
物性を見てみたいと思います。
尚、以下のページで基本的な物性値を確認することができます。
http://www.i-compology.com/woodplastic.html
PP単体と重量で木粉を31、51%それぞれ加えたものが比較表になっています。
比重は木粉添加に伴い上がっています。
これはPPよりも木粉の比重が大きいため当然の変化です。
それでも51%加えて比重が1.1程度ですので樹脂の比重としては一般的です。
引張強度、降伏強度、シャルピー衝撃などがありますが、
こちらについてはそれほど顕著な変化が見られません。
(場合によっては純粋なPPよりも低下)
その一方で大きく変化するのが曲げ弾性率。
特に曲げ弾性率は31%の添加で20%、51%添加で200%以上上がっています。
この弾性率の変化により熱変形温度(HDT)も改善。
0.45MPa負荷のもとでは木粉31%添加、51%添加でそれぞれ15℃、30℃の改善が見られます。
以上のことから木粉が強化材としての機能を果たしていることがわかります。
日本の間伐材という国内有用資源活用とリサイクル
ここが実は最も重要です。
あまり知られていませんが、日本という国は全国平均で森林面積が67%程度あり、
先進国でいうとトップクラスです。
森林面積だけで見ても世界で23位と、森林が多い国であると再確認できます。
国土面積を考慮すれば驚異的な数値といえるかもしれません。
気候の恵まれた土地であることの裏返しなのではないでしょうか。
※参照URL:
http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h24/1.html
http://top10.sakura.ne.jp/IBRD-AG-LND-FRST-K2.html
そしてご存じな方もいるかもしれませんが、森林には「 間伐 」という管理が必要です。
木の全体に日光をあて、ある一定以上の成長を促すには成長が遅い、
または枯れかけている木について間伐を行い、
残った木の更なる成長を促していくとのこと。
これにより、以下のようなことが起こります。
1.老いた木や枯れかかった木を切ってあげると日当たりの良い場所ができる。
2.種が飛んでくる。
3.春になると日が当たるようになったところは一面に芽が出る。
4.今まで日陰になっていた場所や芽に日が当たりさらに成長。
こうして森林というのが成長していくそうです。
※参照URL:
http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/policy/business/raise.html
この間伐によって出てくるのが間伐材。
間伐材をきちんと消費するというのは、
結果的に上記の森林管理を促進し、
日本産の材料で新しいマテリアルサイクルができるのです。
ウッドプラスチックに使う強化材料の木材は上記の間伐材を想定しているとのこと。
さらに熱可塑性樹脂がマトリックスであるためマテリアルサイクルが容易なうえ、
木材が入っている材料であるため燃焼によってエネルギーサイクルを進める、
いわゆるサーマルサイクルも可能になります。
日本発の産業構築にFRP業界ができることは
間伐は現在、海外の安い木材に押され、ほぼ壊滅状態です。
補助金などを得られないと間伐をする費用さえ捻出できないのが現実のようです。
※参照URL:
http://www.zenmori.org/kanbatsu/report/01_3.html
一方で林業は国内に資源が多い潜在的には健全な事業。
木材を木材として売っているだけでは海外の廉価な木材との価格競争になってしまいます。
この状況を打破するために必要なのは、
「材料に付加価値をつける」
ということ。
今回ご紹介した i-Compology Corporation のウッドプラスチックは付加価値を提唱する一つの選択肢と考えることができます。
将来世代に向けた地球環境維持というグローバルな視点はもちろん、
その視点を実現するために技術で産業を興し、利益を生み出す事業へと育てる。
そんなメッセージを受け取ったと考えています。
FRP業界として、上記のような社会問題の解決に向け、
新事業の促進に貢献するというのも使命の一つなのかもしれません。