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JEC 2018 Innovation award ファイナリストから見る動向

2018-02-27

いよいよ来週に迫ったJEC 2018。

今日のコラムでは Innovation award ファイナリストから、
欧州における業界動向について考えてみたいと思います。

 

JEC 2018 innovation award ファイナリスト


一覧は以下のURLから見ることができます。

http://www.jeccomposites.com/events/jec-world-2018/jec-programs/innovation-awards-finalists


その中から気になったものを抜粋してみたいと思います。

 

Modular thermoplastic stiffening panels

Fraunhofer ICT (Germany) and partners Airbus Operations GmbH (Germany), Laser Zentrum Hannover e.V. (Germany), TenCate Advanced Composites BV (The Netherlands), ElringKlinger AG (Germany), KMS Automation GmbH (Germany).


熱可塑の靭性に注目したアプリケーションの本格的な登場です。
今となっては熱可塑性樹脂は

「靭性+αが欲しい」

という状況ではありますが熱可塑について理解が深まったことを感じます。


熱可塑の+αも色々な観点がありますが、
材料管理が楽というのが一例ですね。

俯瞰的にみることで様々な観点が出てくると思います。

 

Polyurethane-rtm nose cone for jet engines

University of Applied Sciences Rapperswil (Switzerland) and partners FACC (Austria), Rühl Puromer GmbH (Germany), Isotherm AG (Switzerland), WPT, TU Dortmund (Germany)


熱硬化といえばエポキシという固定概念がそろそろ限界にきている例です。

数年前からウレタンが急上昇しています。

あまり知られていませんがウレタンは物性のバランスが良い材料であり、
スプレー含侵の例などは2年以上前にJECでも発表されています。

それをしかも航空機のエンジンの回転部品に乗せてしまおう、
というのはなかなかの前衛的な取り組みだと思います。

当然ながら材料だけでなく設計的な観点も入れていることは間違いないでしょう。

 

Mould-less monocoque manufacturing process

M. Torres Diseños Industriales SAU (Spain)


個人的に気になったものです。
型というのは高い設計スキルと作製に時間がかかるのが一般的。
それを型無しでモノコックまで作ろうというのですから思い切った話です。

どのようなことを狙っているのか、見てみたいところです。

 

Composite lightweight automotive suspension system

Ford-Werke GmbH (Germany) and partners Gestamp (UK), GRM Consulting (UK), University of Warwick (UK).


こちらも今となっては鉄板テーマですね。
今後、さらに拡大していくと予想されます。

欧州だけでなく日本を含めた世界中で取り組みが加速している製品ではありますが、
目の前の製品として注目されているというよりも、
内燃機関の割合が減って電動化が進む際に訪れる

「将来的な大幅設計変更時のインストールをにらんだテーマアップ」

と見た方が妥当でしょう。

 

Mass production of cfrp stabilizers and drop links

Action Composites (China) and partner Dr. Ing. H.c. F. Porsche AG (Germany).

自動車関係でいうと私が最も注目するテーマの一つです。

比較的部品も大きいのと何より異方性を活用した設計が可能なのがメリットといえます。

このような技術は電動化への応用も期待できることから、
電動自動車で参入する新興企業へと広がっていくと期待されます。

 

Below the line: concrete pipe repair with carbon fibre

Grupo Navec (Spain) and partners Saertex GmbH (Germany), Henkel (Germany).


これは日本でも注目される管更生のテーマですね。
インフラの老朽化とオリンピック開催が迫る日本にとっても喫緊のテーマといえます。

管更生というのは古くなった既設の下水管などの内側にFRPのライナーを貼り付けることで補強するものです。
内壁がFRP化することで新しくなることはもちろん、耐久性も上がります。

管を丸ごと交換するよりも工期が短く、それ故低コストといわれており、
これから先進国で飛躍的に増えていくものと予想しています。

管更生を行う企業の一例は以下のような企業です。

株式会社ケンセイ
http://www.kk-kensei.co.jp/maintenance/index.html

サン・シールド株式会社
http://www.sunshield.co.jp/product/mole/maintenance/pipe-renew/

 

Cabkoma CFRTP strand rod

Komatsu Seiren Co., Ltd (Japan) and partners Kanazawa Institute of Technology (Japan), Nagase ChemteX Corporation (Japan).


こちらは日本企業のテーマですね。
ICC(金沢工業大学)も絡んでいます。

熱可塑性を示すエポキシという材料(架橋点間の距離が長い)を用いることで、
耐久性と靭性のある材料として今後の拡大が期待されるとのこと。

日本企業ということもありますので応援したいですね。

 

Composite cargo decks for a 7000-car car carrier vessel

Uljanik JSC (Croatia).


海運の話です。
海の輸送というのも大切なテーマであることを忘れてはいけません。

軽いほど多くのものを載せられる、という考えは基本的には航空機と同じです。

加えて潮風が吹く中での運用となりますので耐腐食性の高いFRPが活躍するフィールドでもあります。

 

Breakthrough in railways: renovating the ice train

Saertex GmbH & Co (Germany) and partners Forster System-Montage-Technik GmbH (Germany), Alan Harper Composites (UK).

これは面白いですね。
氷を運ぶ列車の床材のようです。

FRPの断熱性に注目したアプリケーションで当然ながら軽くなる一方、
従来の木材よりも耐久性が高まるようです。

 

5g smart led lighting pole

Exel Composites Oyj (Finland) and partners Nokia Bell Labs (Finland), Vaisala Oyj (Finland), Teleste Oy (Finland), Indagon Oy (Finland).


こちらも個人的に好きなテーマです。

町中の光るポールへの適用です。
このようなテーマを皮切りに、
人にやさしく、かつ地震などで仮に倒れたとしても人へのダメージを最小化するようなものへの拡大を期待したいところです。

 

Wet Core Pod composite housing module

MC Materiales Compuestos (Argentina) and partners Plaquimet (Argentina), Purcom (Brazil), IS Groupe – Composite Integrity (France) – G12 Innovation (Brazil). 


工場などを想定した建築物への適用です。

日本ではいろいろな意味(法規、地震などの自然災害等)で拡大が難しいかもしれませんが、
新興国などでは非常に面白いテーマとなっていく可能性があります。

軽量材料のため組み立てが楽、建築期間が短いというメリットを踏まえ拡大が予想されます。

 

3-in-1 line for recycled composites manufacturing

CETIM-CERMAT (France) and partner CETIM (France).

遅かれ早かれ取り組まなくてはいけない材料のリサイクルに関するテーマです。
ポイントは流通量の少ないCFではなく、より幅広い材料に向けられているか、
というところだと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか。

ざっと見たイメージではJECでも少しずつ地に足の着いたテーマが増えてきているような気がします。

自動車や航空機などに限らず、
建築やインフラなどに範囲が広がってきていることは好ましい動向ととらえています。


実際にどのような流れが欧州で見えるのかは現地で感じるのが一番だとは思いますが、
上記の話が全体の動きを感じる一助になれば幸いです。
 

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