MaxCore による Sandwich Core の 層間方向への繊維挿入技術 Vol.121
今日のコラムでは
「 MaxCore による Sandwich Core の層間方向への繊維挿入技術 」
ということについて述べてみたいと思います。
再度注目の集まる Skin / Core 構造
FRP業界で再度注目が集まっている「スキン/コア」構成。
元々は軽量化と厚み方向への圧縮強度向上を目的に、
航空業界等でハチの巣構造のハニカムと組み合わせ、
ハニカム/スキンの Sandwich 形態ができた、
というのがその原点といわれています。
尚、この場合はハニカムが使われる内部がコア材、
その外側を外殻のように覆っているのがスキン材として定義されるのが一般的です。
ハニカム材料としてはアルミやアラミドが材料として使用されていましたが、
面内圧縮や引張の強度が低いため加工時の取り扱いが難しく、またアラミドを主材とした Nomex ハニカム等は、
使う場所によっては吸水するなどの問題が発生するケースもあり、
使う側の力量を試す材料の一つである、というのが私の印象です。
そのような背景を踏まえ最近登場しているのが、
異方性を有さない
「フォーム材」
です。
フォーム材とは
その名の通り、発泡材をイメージいただければと思います。
近年は熱可塑性性のフォーム材と組み合わせ、
低コストと使い勝手を両立したような製品も登場しています。
以下のような技術はその一例です。
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SABIC のCFRTPとPPフォーム材を組み合わせたバッテリー用ハウジング部品
https://www.frp-consultant.com/2019/02/16/sabic_cfrtp_pp_foam_battery_housing/
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フォーム材はハニカムと異なり、異方性を持たないという強みがある一方、
ハニカムと比較すると層間圧縮強さが劣るのが一般的です。
(尚、面内圧縮強度はハニカムよりもフォーム材の方が高い)
このようなフォーム材の欠点を補うべく登場したのが今回ご紹介する、
「MaxCore による Sandwich Core の層間方向への繊維挿入技術」
といえそうです。
この技術の概要についてはこちらのページをご覧ください。
層間方向への繊維挿入技術
詳細はあまり開示されていませんが、
要はコア材にドライの繊維を任意の角度と量で挿入する、
というのが概要のようです。
要点を以下に箇条書きにて書いてみたいと思います。
– 対応寸法について厚みは30mmから200mmまたはそれ以上、長さは2500mmから3000mmまたはそれ以上。
– 挿入する繊維の位置、配向等は任意であり、局所補強なども可能。
– 材料に対する柔軟性もあり、コア材はエポキシ、ポリエステル、ビニルエステルに対して適用可能。
挿入する繊維材料の選択肢はアラミド、CF、GF、バサルト、天然繊維、人工繊維がある。
一例として述べられているのはガラス繊維ですね。
ドライと言いながらも何らかの結束剤を用いている可能性もありますが、
詳細は不明です。
ここで大切なのは
「このような技術がどのような設計的メリットを生み出すか」
ということでしょう。
私個人的には任意の方向に任意の繊維を入れられるということから、
フォーム材の厚み方向に対する圧縮強さ(層間圧縮強度)の向上が期待できます。
それ以外にも盲点なのは、
「面内せん断方向への強さの向上」
でしょう。
一般的にフォーム材とスキン材の界面は接着剤によって一体化されます。
このようにして製作されたコア/スキンの部品は圧縮方向だけでなく、
せん断荷重を受けるのが一般的です。
この重要性は元々航空機の機体メーカーでは認識されており、
自前の試験規格により評価をしてきましたが、
2017年に ASTM D8067 という picture frame を用いた面内せん断試験規格ができました。
https://www.astm.org/Standards/D8067.htm
※この試験規格のコア材料はハニカムが想定されています。
この辺りは以下のコラムでも書いたことがありますので、
興味ある方はそちらもご覧ください。
PP Honeycomb のライセンス製造を行う ThermHex
コア材であるフォーム材に対し、斜めに強化繊維を挿入できれば、
コア/スキン構造部材の面内せん断強度の向上が目指せるというのは、
設計者としては考えなくてはいけない観点でしょう。
MaxCore の技術はまだ非開示の部分も多く、
また JEC World ではエポキシ樹脂等の材料メーカーの Sicomin 内のブースで発表しており、
Sicominのインフュージョン用エポキシ樹脂と4mm長さのガラス繊維を組み合わせた試作品も展示したとのこと。
自前のブースを持っていないことからもまだ若い企業ともいえそうです。
しかし、このような自社の技術コンセプトを市場に提案し、
ニーズやシーズを掘り起こすという姿勢はビジネス上は合理的です。
小さい企業だから信頼性がと言う前に、
まずは自社製品に対してどのように活用できそうか、
ということを上記のような設計的観点を持ちながら技術的議論をすることで、
新たなブレークスルーが生み出せるのではないでしょうか。