CFRP/Innegra スキンと EPS コアのサーフボードへの適用
FRPが比較的昔から使われている、
水上スポーツ。
サーフィンはその典型です。
私の知り合いのサーフィンが趣味の方は、
自分でハンドレイで補修していると言っていました。
このサーフィンですが最近は色々なものが出てきているようです。
そのうちの一つが、
「電動プロペラのついたサーフィン」
です。
波が無くとも推進することができるとのこと。
以下がそのイメージ動画です。
少し水面から浮いていますが、
水面下で電動のプロペラが推力を生み出し、
波が無いところでも前進することができます。
いわゆる ハイドロフォイル ですね。
Fliteboard と呼ばれるこの製品については、
以下のHPで概要を見ることができます。
Fliteboardの概要
最大速度は45km/h、1回のフル充電で90分間は巡行できるようです。
またGPSも備えており、
どのようなルートで移動したか、
といったことも記録できるとのこと。
私自身、マリンスポーツはシュノーケリングくらいしかできませんが、
見ている限りとても楽しそうです。
さて、このような水の上をある程度の速度で移動しながら、
急激な方向転換をするという乗り物には、
「軽量かつ高剛性」
という性能は必須とも言えます。
そして上記の Fliteboard という製品も、
「CFRP/Innegra スキンと EPS コア」
という材料構成になっています。
いわゆるスキンコア構造ですね。
コア材
コアに用いられているのはEPSコアです。
EPS は Expanded Poly-Styrene の略で、
ポリスチレンのフォーム材です。
これは今回のサーフィンに限らず、
色々な建材にも適用されるなど、
身近な材料の一つです。
スキン材
スキンはCFRPと Innegra のハイブリット。
InnegraというのはPPベースの高強度繊維で、
有機繊維特有の高い靭性と、
オレフィンの特徴である低密度の特性を持ちながら、
強度を大幅に改善した比較的新しい繊維です。
以下のページで概要を見ることができます。
一例として上記のInnegraの特性を見てみると、
密度は0.84、引張弾性率は14GPa、強度は640MPaであり、
当然ながら炭素繊維やガラス繊維と比較して、
強度は半分から3分の1程度、
弾性率は4分の1から20分の1程度です。
ただし、密度は2分の1から3分の1程度と、
オレフィンらしく密度はかなり低めです。
よってInnegraは剛性は高いといっても、
FRPの一般的な無機繊維と比較すると、
極めて軽い一方、柔らかく、しなやかである印象です。
そして何より注目はその破断伸び。
20%以上変形できるので、かなりのエネルギーを変形により吸収できます。
そのため、アラミド繊維と組み合わせた上でアプリケーションに防弾チョッキも含まれているのです。
(上記のスライドの9ページ目をご覧ください)
このしなやかさにより、構成材料の靭性を高める、
というのが炭素繊維と組み合わせる動機になっています。
以下のような動画もあり、Innegraが高靭性繊維である、
ということを訴えかけていますね。
訴え方が大分ガサツな印象はありますが、イメージには残りますね。
今回Innegraをハイブリットにする動機は上記の特性を高める、
ということに加え、
「材料価格を抑える」
ということにも主眼が置かれているのは当然です。
B to C のビジネスにおいてはハイエンドといっても、
高価格帯には限度があるため、
ここは戦略として大切なところです。
このような価格とパフォーマンスのバランスを取りながら、
製品設計をしたというのは、
今回の Fliteboard の製造を担当した Cobra (タイのFRP成型メーカー)の高いノウハウを感じます。
スキンコアのスキンに無機繊維と有機繊維を組み合わせる。
今後、FRPがより身近な製品になるには、
このような異種材の組み合わせがさらに増えていくのかもしれません。