はやぶさ2 に採用されたMMC(Metal Matrix Composites)
最近打ち上げに成功した"はやぶさ2"。このマイクロ波放電式イオンエンジン部のリングとしてMMC(Metal Matrix Composites)が採用されました。
小惑星探査機として無機系小惑星のサンプルリターンに成功した""はやぶさ"。
このニュースを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
今回の継続機"はやぶさ2"は、この実証機にあたるといわれ、次は有機系の小惑星を目指してサンプルリターンをすることで生命の起源に迫ることを目指しています。
先日開かれていた宇宙博に行きましたが、こちらでもはやぶさのコーナーは大人気で、イトカワから持ち帰ったサンプルを顕微鏡で見るというコーナーがあったのですが人だかりでした。
さて、先日打ち上げが無事に成功したはやぶさ2ですが、搭載されているマイクロ波放電式イオンエンジンのリングにMMCが採用されているそうです。
http://premium.ipros.jp/japanfc/catalog/detail/300210/
こちらのページでは一般的にPMC(Polymer Matrix Composites)という、繊維を強化するマトリックスが高分子化合物であるPolymer(プラスチック、樹脂、ゴムなど)をベースにご紹介していますが、MMCはこのマトリックスがMetal、すなわち金属であるものです。
ページにある材料基本組成を見たところ、アルミがマトリックスで、強化繊維がSiCのようです。
採用理由は
– 軽量
– 低線膨張率
– 振動減衰特性
と書かれていますが、極寒環境であること、部品の信頼性を考えると後者2つが重要視されたのではないかと推測します。イオンエンジンが生命線となって帰還に成功したはやぶさを考えると、信頼性というのが最重要であるのは間違いないでしょうね。
先日参加した複合材料学会でも印象にありましたが、最近MMCが増えてきているような気がします。CMC(Ceramic Matrix Compoistes)も少し紹介されていました。
主な理由の一つに、Polymerがマトリックスでは使用できる環境温度に高い制限がある、ということがあげられるかもしれません。
ただし気を付けなくてはいけないのは、マトリックスに金属を使用すると当然ながら"軽量化"のメリットは大幅に低下するということです。
さらに、金属単体であれば均質材ですが強化繊維を入れるなどの複合材料、いわゆるCompositesにするということは質のいい均質材の中に異物である繊維を入れてしまうことになるので材料物性の品質安定低下にもつながってしまいます。
この辺りは気を付けた上で、複合材料がいいのか、金属単体がいいのかは注意深く選定することが重要と考えます。
最後に、はやぶさについてご存じではないかもしれない内容についてご紹介したいと思います。
実は、前回イトカワから帰還したはやぶさ。
これはコンセプト実証機だったそうです。
はやぶさの開発に従事されているJAXAの方から直接お話をうかがって知ったことです。
ですが、マスコミで取り上げられたこともあり、サンプルリターンのコンセプト実証機というよりも実戦の探査機という扱いになったとおっしゃっていました。
裏を返すと、今回のはやぶさ2こそが本当の意味でのはやぶさの実戦機であり、今回目指す有機系小惑星が本来サンプルを取得したかった本当のターゲットということのようです。
世界で唯一達成したサンプルリターン。小惑星探査では日本は世界最先端を走り続けています。今後も世界を引っ張って、はやぶさが生命の起源に迫る大きな情報を提供してくれると期待しています。