Compositeの機能性発現の可能性を与える導電性 CNT wireとCNT センサー
FRP Consultant 株式会社は、埼玉県産業振興公社が主催しているナノカーボンプロジェクトに参画しています。
本プロジェクトにおいてはCNT( Carbon Nano Tube )に金属メッキを施すことで、極めて導電性が高くまた軽量化が可能な新たな導電媒体の研究を進めています。
当社は本プロジェクトにおいて、この導電性を応用した「センシング技術」に関するコンセプト提案を行い、JEC Group のHPにおいて英語でのプレスリリースを行いました(下記の画像をクリックすると JEC Group のページに移動します)。
同内容は当社HPページでも転載しております。
本コンセプトは軽量化+αの「 機能性 」を求められているFRP業界にとって必須のアプローチの一つである一方、異業種、他業種の協業が不可欠です。上記のコンセプト提案はこのような背景を踏まえてのものとなっています。
本プレスリリースの日本語での内容を以下に記載いたします。
引き続き当社の技術向上に向け、民間企業のみならず公的なプロジェクトに参画し要素技術研究に取り組んでいきたいと考えます。
< 以下、リリース内容 >
FRP業界におけるナノテクのアプローチ
炭素の代表的な形態の一つである Graphiteは、ナノスケールでの形態によってGrapheneやカーボンナノチューブ(CNT)といったものがあり、Nano carbonとも呼ばれる。
これらナノカーボンのComposite Materialとしての応用例として、Grapheneは発泡ポリウレタンと組み合わせた柔軟性と耐衝撃性を有する保護具、CNTはFRPのマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂に添加されることで破壊靭性や熱伝導率の向上を実現したものがある。
しかしながら、Composite Material へのナノカーボン適用動機は多様化しており、従来の特性に加え「新たな機能性」を発現することが求められている。
そしてComposite Materialに求められる「新たな機能性」の一つとして、注目されているのがセンシング技術である。
埼玉県におけるナノカーボンプロジェクト概要
上記のようにナノカーボンの技術が広がりつつある中、埼玉県先端産業創造プロジェクトの1つとしてNano carbonを挙げ、事業を展開している。
Nano carbon分野の中では埼玉県産業振興公社が主催したプロジェクトがその主体であり、礎電線を中心とした複合企業のコンソーシアムで、導電性 CNT wire の研究開発を進めている。
CNT は平面巨大分子全体にπ共役系がある構造故に導電性があることに加え、導電効率低下につながる渦電流が少なく、また密度が1.3から1.4g/cm3で軽量である等の特性がある。
CNT は ballistic transport を示すことから、極めて優れた導電性を示すといわれているが、形態が不均一で長繊維合成が不十分で長繊維のCNT が少ないため導電率が高まらないという課題がある。
導電性 CNT wire の研究開発では、CNTをwire状態にしたうえで金属メッキを施すという斬新なコンセプトにより、CNTで銅電線相当以上の導電率を実現することを目指している。CNT wireの形態やメッキ条件の見直しなどを進めたことでCNT wireの導電性は着実に向上しており、LEDの点灯に加え、モーターへの適用を想定したコイルの製作にも成功している。
写真 コイルにして組立てたメッキ済みのCNT wire
CNT wire を用いたFRP向けのコンセプト提案
そしてこのCNT wireを導電線とし、Composite Materialにセンシング機能を持たせるというコンセプトがある。CNTの中でSingle-wall carbon nanotubes ( SWCNTs )は、炭素原子の並び方により金属的な性質と半導体的な性質を発現することが知られている。
これらのCNTはAgarose gel column等により分離が可能であることから、CNTによる温度 センサー センシング実現の可能性がある。
具体的には温度差により電圧を発生するSeebeck coefficientが金属型CNTと半導体型CNTで異なることを応用し、温度を計測するSeebeck elementを作製することが可能である。
また、半導体SWCNTによる Field Effect Transistor ( FET )構造のガスセンサーも有望である。
このようにして作られたCNT センサー と上述の導電性 CNT wire は従来の金属製のものと異なり、軽量であることに加え、炭素繊維を用いた CFRP 中での電蝕のリスクが少なく、またセラミックのような脆さも無い。
CNT を Composite Material に対するセンシング機能付与の一つとして期待されるアプローチである。