「 機械設計 」連載 第二十六回 FRP吸水特性評価方法 ASTM D5229
( The image above is referred from https://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00001007 )
連載開始に関するお知らせについてはこちらをご覧ください。
日刊工業新聞社が発行する月刊誌、「 機械設計 」において
「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」
という題目での連載の第二十六回目です。
2021年3月号の連載では
FRP吸水特性評価方法 ASTM D5229
という題目で書いています。
2021年3月号は以下のURLから概要をご覧いただけます。
https://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00001007
FRPの特性が「水分」という外的要因によって変化するということは前回の連載である「 機械設計 」連載 第二十五回 吸水によって大きく変化するFRP特性と吸水のメカニズムで述べました。
上記の吸水によるFRP特性変化の理解には吸水拡散係数や平衡吸水率の理解が不可欠です。何故ならば、繊維と樹脂の複合材料であるFRPはその組み合わせがかなり多く、当該組み合わせによって吸水挙動が異なるためです。しかし、具体的にどのようにして計測するかについては、ご存知ではない方が多いかもしれません。
そこで2021年3月号の連載では、吸水拡散係数や平衡吸水率の具体的な算出法はもちろん、吸水状態でのFRP材料データを取得するためにどのようなことに留意して試験片を準備すべきか、ということを網羅した試験規格である ASTM D5229/5229M Standard Test Method for Moisture Absorption Properties and Equilibrium Conditioning of Polymer Matrix Composite Materials を参照しながら、その具体的な手順を解説しています。
ASTM D5229 は主に以下の4つの手順に分かれています。
・Procedure A:吸水拡散係数/平衡吸水率の決定
・Procedure B:一般材料試験向けの試験片準備法
・Procedure C:公称相対湿度50%の材料試験向け試験片の準備法
・Procedure D:絶乾試験片の準備法
特に大切なのは、Procedure Bでしょう。FRPという材料がどのような状態になれば平衡吸水状態になるのか、ということを重量変化率という実測データから判断します。
また材料仕様がある程度固定されたうえで長期的な吸水挙動を見ようとするのであれば、間違いなく Procedure A を行う必要があります。長期的な吸水挙動は実験だけだと数カ月はもちろん、場合によっては数年にかけて吸水挙動が変化する可能性があるためです。吸水拡散係数や平行吸水率は長期視点での吸水挙動を予測するために必要な基礎データとご理解ください。
そしてもう一つ忘れてはいけないのは、湿度管理された際の吸水挙動と、水に沈める水浸漬では、吸水という挙動そのものが異なるということです。この辺りは最近の論文での結果も引き合いに出しながら解説を行いました。
FRPの吸水挙動を具体的にどのように評価すべきか、ということを知り方にご一読いただきたい内容です。