木材資源と高機能繊維の融合による Advanced Fiber Reinforced Wood の技術開発
繊維メーカー大手の Teijin から新たな繊維強化材料である Advanced Fiber Reinforced Wood (AFRW)の提案です。
テクノーラを初めとしたアラミド繊維を得意とするTeijin、
そしてグループ企業である炭素繊維大手のToho Tenaxがそれぞれの強みを発揮し、
木材を繊維強化することで中層建屋の構造部材に使用することを目指すとのことです。
以下にTeijinのプレスリリースがあります。
http://www.teijin.co.jp/news/2015/jbd150204_43.html
日本は地震、台風といった自然の力によって建物を失うという事が多い国の一つです。
その一方で、日本は森林大国。
国全体の面積を占める森林の割合を示す森林率。
日本は、フィンランド、スウェーデンに次ぐ、世界トップレベルの70%近い値を示しています。
http://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_japan.php
この様な高い森林率を誇る日本は昔から木材を建造物の素材として活用してきました。
ところが、森林自給率90%を超えていた昭和30年代から木材輸入の自由化によって自給率は大きく低下。
現在は28%を前後する状態です。
これによって日本の林業は衰退し、山林が荒れるようになった、という話をきいたことがあるかもしれません。
このような状況下にあって、新しい材料である機能繊維で木材を強化するというのは非常に面白い試みであると思います。
強度や剛性はもちろん、耐熱性、振動吸収性といった機能性を発揮することも不可能ではないかもしれません。
日本は木材建築に関する設計技術が非常に高く、そこに従来材料よりも優れた物性をもつAFRWをもちいることで、建築物の耐震性や耐風性といった建築物の新たな価値を見出し、自然と共存する新たなライフスタイルを生み出すきっかけになるかもしれません。
ただし、注意すべき点が一つだけありますね。
それは、加工性です。
特にアラミド繊維のような難加工繊維を用いた場合、木材とは比較にならない極めて難しい加工が必要となります。
このようなデメリットもうまく乗り越えることが技術的には必要になるに違いありません。
そしてもちろん、素材費が高くなるため、低コスト化に向けた努力も必要ですが、
それ以上に品質を落とさず、高くなってもそれを付加価値として認めてもらう、
ということを最優先に普及に取り組んでいただきたいものです。