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柔軟性のあるラミネートFRPとして接着剤不要の ALUULA Vaepor

2021-12-13

FRPというと、その言葉を何となく知っている方であれば、
タンク、配管、槽、シャフト、ブラケット、翼等の基本的に構造部材を思い浮かべると思います。

しかしながらFRPはこのような基本的に形状が変化しないものだけでなく、

「柔軟性のあるラミネート」

というものもあります。

 

今回はラミネートを一例にALUULA Vaeporという製品について触れてみたいと思います。

 

 

柔軟性のあるラミネートとは

まず最初に理解しておかなくてはいけないのは、

「ラミネート」

という言葉です。

 

欧州を中心に熱可塑性FRPの積層体をラミネートというケースもありますが、
これは積層体なので剛直で変形しない板のイメージとなりますが、
今回のそれとは違います。

最もわかりやすいのは以下のような動画かもしれません。

 

これは PENTA TX というラミネートの紹介動画です。

カイトサーフィンと呼ばれる、
凧を上空に上げることで従来のウィンドサーフィンよりも大きな推進力が得られるウォータースポーツを一例に、
PENTA TX の凧の特徴などが述べられています。

カイトサーフィンの凧では風を受ける部分が肝かと思いきや、
それを支える骨組みとの連結部分が大変重要のようです。

骨組みとの連結を強固にすることで不要な凧の変形を防ぎ、
風を効率良く推進力に変えるということが求められています。

ラミネートの構造のイメージについては、
上記動画の40秒のあたりから説明があります。

まず強化繊維に該当する Yarn があり、
それを支える土台となる織物の Fabric が下地となります。

その上から動画中で Coating として表現されている、
FRPでいうマトリックス樹脂に該当する材料が接着剤としてYarnとFabricを一体化させ、
層間方向(厚み方向)に対しては強固で、かつ柔軟性を維持するラミネートとなります。

このようなラミネートを凧の骨組み連結部分に使うことで、
強くしなやかな凧が出来上がるのです。

 

 

ALUULA の材料は軽量、高強度である上、耐摩耗性に優れる

今回ご紹介する ALUULA Vaepor はこのラミネート材の一つです。

以下が該当するプレスリリースです。

ALUULA Commercializes the World’s Lightest and Strongest Soft Composite Materials

ALUULA Vaepor の素材は何かというのは書かれていませんが、
特徴として理解しておくべき点は以下の通りです。

– 溶融紡糸で作られる糸を使用

– 糸の基本化学構造は共重合体からなる

– 密度の低い材料である

– 一般的なラミネートに必要な接着剤が不要

– 従来製品と比べて高い強度と比強度を有する

 

接着層が不要というのは大きな特徴の一つ

特に注目すべきは接着が不要という部分です。

基本的にラミネートは Yarn と Fabric 等を一体化するため、
樹脂層を使うことが多い。

しかし、今回の材料は化学構造を見直した共重合体であることから、
このような樹脂層が不要で一体化できるようです。

当然ながら樹脂層が減れば目付が小さくなる、
すなわち軽くなるというのがそのメカニズムだと想像します。

 

機械特性も優れる

また、特性については比較表が ALUULA のHPに掲載されています。

わかりやすいくらいの競合材料が並んでいます。
競合他社の製品名をそのまま記載するのは海外らしいと言えばらしいです。

Dyneema、Dacron、そして冒頭でも触れた Penta TX です。

Dyneemaは言わずと知れた超強力超高分子量ポリエチレンです。
有機繊維の中ではかなり強度の高い素材として認識されています。

Dacronは今は高強度というよりも、機能性を売りにした材料となりつつある印象です。
ポリエステルが主材料で、寝具や断熱材として今でも多く使われています。

Penta TX は ALUULA と同じく、アウトドアやスポーツ向けとして展開しています。
概要についてHPで述べられています。

ALUULA Vaepor は破断荷重評価において、目付が最も小さいにもかかわらず、
競合材料が600から900N程度なのに対し、上記3種の競合材料よりも高い1200Nという値を示しています。

同様に比強度も同様に1.5から3倍程度の値を示しており、
軽くて強いというのはデータとしても示されています。

 

耐摩耗性を売りにしたラインナップも存在

ALUULA Durlyte という耐摩耗性向上に注力した材料については、上述のDacronに加え、Cordura 1000DやX-PAC VX42といった高目付(厚手)の材料との耐摩耗性を比較しています。

Cordura 1000Dはナイロンベースの繊維で、アウトドア向け材料であり、
米軍の装備品にも使われています。

X-PAC VX42は、耐摩耗性の420デニール・ナイロン、中層に防水のポリエステルフィルム、
裏面に50デニールのポリエステルタフタとダイヤ状に強度の高いブラックポリエステルX-Plyを配し、
ハイドロステート防水構造技術を組み合わせた耐久性と防水性に優れたマルチレイヤー素材とのことです。

※参照元:https://www.yamatomichi.com/products/59274/

 

どれもアウトドアを意識したような素材ですが、
耐摩耗性はALUULA Durlyteの目付が最も小さいにもかかわらず、
6倍以上の耐摩耗寿命を示しているとのこと。

 

 

このような優れた性能を評価され、
スポーツ製品を社会的な観点からも評価するISPO Textrends Announces the Best Productsにて、
Fall/Winter 2021/2022で ALUULA Vaepor が選ばれています。

ISPO Textrends Announces the Best Products for Fall/Winter 21/22

尚、ALUULA Durlyte は同賞の2022/2023に選ばれた模様です。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

今回は柔軟性のあるFRPとしてラミネートをご紹介しました。

アウトドアやスポーツという比較的身近な製品にも実はFRPが使われていた、
ということを意外に思われた方もいるかもしれません。

 

どうしてもFRPというと航空宇宙やレース車両、
または貯水槽や公園の遊具といった固定概念があるかもしれませんが、
FRPは必ずしも構造部材でなければならないということではありません。

 

ラミネートもまたFRPの一種であるというご理解をいただくことで、
様々なアプリケーションへの展開検討の一助としていただければと思います。

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