チョップ炭素繊維の熱可塑性樹脂ペレット上市 Vol.094
リサイクル炭素繊維の不織布等の販売で存在感を増しつつある
はイギリスに本社のある企業です。
CARBISO(TM) M はリサイクル炭素繊維不織布製品の一例です。
http://www.elgcf.com/products/100-recycled-carbon-fibre-nonwoven-mat
このようなリサイクル炭素繊維だけでなく、
最近ニーズの高まりつつあるチョップ炭素繊維であるCARBISO(TM) CT なども持っており、
炭素繊維を主体とした様々な基材を取り扱っています。
そして本年2月にリリースされましたが、
日本の三光合成とパートナーシップを結んでマトリックス樹脂を提供してもらうことにより、
ELGが持っていた基材と組み合わせて複合材料としての製造販売が可能となりました。
ELGと三光合成のパートナーシップに関するリリースは以下の所で見ることができます。
http://www.elgcf.com/news/elg-carbon-fibre-and-sanko-gosei-formalise-technical-partnership
そして今回メールマガジンで紹介するのは、
炭素繊維のチョップ材料(恐らくCARBISO(TM) CTベースのもの)を用いた、
熱可塑性のペレットです。
本年のJECでもブースを構えていました。
http://www.elgcf.com/news/elg-carbon-fibre-accelerates-uk-expansion-plans
情報がまだ多くないので詳細は不明ですが、
自動車OEMやTier1への提案を主軸にここ2年程検証を進めているようです。
自動車ということはマトリックスはPA6かPPあたりでしょうか。
ある程度繊維長のあるペレット材料というのは決して珍しいものではなく、
例えばガラス繊維を基本としたLFT(Long-fiber-reinforced thermoplastic)等は、
世界で年間数十万トンスケールで使われています。
ただ今回ELGから発表されたのはLFTとは違い、
チョップ材料を基本としたペレットであるため、
繊維長や繊維配向はよりばらつきが大きいものと推測されます。
いずれにしても量産に対して抜群の強みを有する射出成形に用いるペレットを、
チョップ形態の炭素繊維で強化しようというのは興味深いアプローチといえるのではないでしょうか。
繊維長が短くなればなるほど、
繊維量が少なければ少ないほど、
一般的なペレットに近い取り扱い性を実現し、
射出成形本来の量産性を実現できます。
一方で繊維強化した複合材料としての性能を発現しようとすればするほど、
繊維長はより長く、繊維量はより多く、
という方向性を目指す必要があり、
射出成形工程に対しては材料の流動性が低下する、
射出温度が上がる、スクリューの摩耗が激しくなる、
といった厳しい成形条件となります。
複合材料の性能発現と取り扱い性というのは常にジレンマになります。
上記の材料も実際に使ってみると問題点が多いと考えられます。
講演はもちろん、コラムやメールマガジンで繰り返し述べていますが、
そこを成形加工という材料と製品のつなぎの工程ではなく、
製品の製造の基本である形状をはじめとした設計の時点で材料の特性を生かすよう最適化する、
という取り組みで乗り越えるという思考回路が重要であるのは言うまでもありません。
炭素繊維の新たな適用の可能性の一つとしてご参考になれば幸いです。