三次元織物のファンブレード
JEC、Composite Worldといった業界サイトで2/21に一斉にリリースされていましたが、
Safran と Albany がLEAPエンジン向けの複合材料部品工場を立ち上げたとのことです。
SafranのHPでもリリースを見ることができます。
工場はメキシコのQueretaroという州で、Safran と Albanyの工場は3か所目とのこと。
作る部品はLEAPエンジンのファンブレードとガイドベーン(ファンブレードの後ろの静翼)。
どのような工場のイメージなのかは以下の動画を見るのが早いと思います。
三次元織物でプリフォームをした後、3D RTMという技術を用いて樹脂を含侵。
リーディングエッジ(翼の先端)の保護のために金属のプロテクターを装着した後、
仕上げ加工、表面保護、非破壊検査などを行っている様子がダイジェストとしてみることができます。
やはり航空機エンジンの一次構造材なので万全の態勢で作っていますね。
動画を見る限りでは品質安全の原理原則に則ってやられているのよくわかります。
技術が進化しても技術の本質は不変ですね。
その一方で今回のLEAPエンジンでも新規の取り組みがあります。
それが三次元織物です。
これはいわゆる基材設計技術から生まれたものであり、
繊維産業を源流に持つなど歴史があります。
日本でもこのような特殊な織物を作製できる企業は多くありますが、
複合材料の業界で基材設計を理解し、または理解しようとしたうえで活用する、
といのはまだまだ少数派です。
上記の動画でも一瞬だけ三次元織物が映っていますが、
ドレープ性を考慮した配向と積層方向への補強効果、
といったものを狙っているのではないか、
というのが私の考えです。
従来のファンブレードの設計思想は遠心力のかかる方向(径方向)への補強を徹底し、
FODなどの外部からの遺物衝突に耐えられるようねじり方向の補強を行う、
というものでした。
しかしながら三次元織物になると、
最終形状を意識しながら強化繊維の配向精度を高め、
上述の通り積層方向(厚み方向)への補強も可能になります。
エンジンとしての性能も上がったと書かれていることから、
回転数を従来製品より高め、
また翼厚を薄くすることで空力性能を高めることに成功しているのだと思います。
基材作製技術が得意な企業も多い日本。
あとはこのような基材を制御する基材設計思想と知見を有する人材との協業により、
複合材料の新たなフェーズへと向かうことを期待したいところです。