窒化アルミニウムを強化繊維とした高熱伝導率を示す複合材料
FRP材料を主とした業界において、熱伝導率は関心ごとの一つです。
情報技術の進化に伴って通信機器に求められる処理負荷が高まる一方、機器そのものには軽量化と小型化が求められるからです。
計算処理速度は熱に反比例することからも効率的な放熱が求められます。
FRPと熱伝導率については過去に以下のようなコラムでも取り上げたことがあります。
※関連コラム
熱伝導特性を活用した FRP 繊維配向評価と 熱伝導率 の基本
今日は日本の名古屋大学で工業材料ベンチャーとして始まったU-MAPという企業が取り組む窒化アルミニウムと、それを強化繊維とした複合材料についてご紹介します。
主役となる強化繊維は窒化アルミニウムウィスカ
U-MAPにおいて強化繊維はThermalnite(R)と呼称されています。
太さは数μm程度の窒化アルミ単結晶で繊維形状で、247W/mKという非常に高い熱伝導率を示すとのこと。
そして液相-気相成長により、窒化アルミニウムウィスカを高効率で合成するという段階に到達していると述べられています。
※参考情報
Thermalnite(R)の樹脂やゴムへの添加による複合材料化
繊維形状であるためアスペクト比が大きいことから、強化繊維としてThermalnite(R)をマトリックス樹脂やゴムなどに添加した際、繊維同士が接触することで熱伝導効率が高くなるという特徴があります。
その結果、60から90wt%程度の添加が求められる従来の高熱伝導率フィラーと比べて少ない添加量(10から40wt%程度)で、複合材料としての熱伝導率を高めることが可能のようです。
更には従来の球状型フィラーとThermalnite(R)を組み合わせることで、相乗効果が出るという期待もあります。
高い熱伝導率を示す複合材料はサーバやスマホ等の発熱をする情報処理機器の封止材料や接着剤などへの適用が想定されます。
何度か述べている通りFRPは構造部材としてはもちろん、
「機能材料」
としての立ち位置が求められています。
その観点において「熱伝導率」というのは一つの重要な技術軸だと考えます。
今回ご紹介したような材料も参考に、FRP材料の機能材料への進化を後押ししたいと考えます。