FRP戦略コラム – 製品の 寸法管理 に必要な形状設計の考え方
本日の記事では「 FRP 戦略コラム 」として、製品の 寸法管理 に必要な形状設計の考え方ついてご紹介したいと思います。
FRPというのはその材料の異方性、または熱硬化性樹脂の場合の硬化収縮などの材料特性によって、
寸法が成形時に変化する、ばらつく、ということが多く生じます。
このため、加工技術が極めて安定かつ高いレベルにある金属材料よりもFRP材料においては寸法の管理について注意する必要があります。
当然ながら寸法に関する管理は図面で行います。
そして、この図面で最も重要なのは、
「基準面」
の設定です。
FRPに限らずですが、複雑形状を金型によって賦形できるというその素材の特性を生かそうとするあまり、
複雑な3次元形状で多くの面を設計してしまうケースが多くみられます。
ところが、複雑な3次元形状のみで形成される製品は寸法検査をするにあたって必要な「基準」が無いため、CMM(3次元測定機)はもちろん、各種ゲージや計測機器でも寸法を把握することが極めて困難です。
もちろん非接触のレーザー計測で仮想基準を設定するケースもありますが(非接触であっても基準面が必要という原則は変わりません)、FRPはレーザーの反射があまりよくないケースもあることから実測から大きくずれた結果となることがあります。
このような問題を避けるため、FRP製品の寸法を管理するにはあらかじめ基準となる面を作っておくことが重要です。
具体的にはどうしても「ここの寸法を管理したい」という所について、
底面に平行、もしくは垂直な平面を形成させ、そこの寸法を管理するようにすることで、
検査工程の簡略化、安定化を図ることが可能となります。
当然ながら「基準の基準となる底面」が無いと、定盤において安定化させることが難しいので、この様な面を用意しておくことは必須です。
平面に安定して置ける製品であれば、その製品用の検査治具を作ることも容易になるでしょう。
さらに、FRPの成形においてはパーティングライン(型のあわせ部分から生じる樹脂のばり)がどうしても生じます。
このパーティングラインを基準面に重ならないよう、型割を考えることも忘れてはいけません。
FRPの業界にいる企業の方と話していると、寸法管理に関する優先順位が低く、
複雑な形状をいかに短時間で作るか、というところに主眼が置かれていることに違和感を感じることがあります。
実際に量産をすると試作で把握したよりもはるかに大きいばらつきが生じ、
しかしそれを把握するための簡易的な検査が困難で傷口が広がる、というケースが多々あります。
物性の高い材料、早い製造工程といった点だけでなく、
形状設計の段階で寸法検査を意識しながら図面を作成することが、
最終的には問題発生の最小化と解決の迅速化につながることを認識していただければ幸いです。